藤子不二雄からよしみちゃん係まで
狂人軍(1969年)
作/藤子不二雄Ⓐ
王選手が放ったホームランが頭に直撃したことで発狂した主人公がキチガイしか入れない野球チーム「狂人軍」に入団するという内容。
それに加え、実在の野球選手や読売ジャイアンツ、精神障害者に対する侮辱と取られかねない設定を含むため、現在まで単行本化されていない。
登場人物の全員がきちがいという、精神疾患を主題にした過激な内容の不条理ギャグ漫画である。
出典 狂人軍 - Wikipedia
タイトルにもなっている「狂人軍」は野球チームであるが、中盤は野球とは無関係なドタバタ調のギャグ展開に終始しており、実際に野球試合を行ったのは最終話のオープン戦のみ。
しかも対戦相手の試合放棄というイレギュラーな決着になっている。
出典 狂人軍 - Wikipedia
作者、藤子A自身も思い入れのある作品であったが、ほとんど受けなかった。作者曰く『あの作品をわかってくれる人は通ですよ。』とのこと。
出典 狂人軍 - Wikipedia
よしみちゃん係(2006年頃)
作/茶否
少しオツムが弱い女の子の性を描いたエロマンガです。障害児を題材にしたエロマンガでは有名な作品ですね。
こちらの作品は2007年刊行のコミックス 『おるすばんはせつなくて』(茜新社)に収録されてますが、現在Amazonでは販売中止となっています。
■作者のことば
最悪単行本収録できないかもと不安だった問題作。
障害者の性っていうのは取扱うのが難しいテーマで、商業誌だから色々とオブラートに包みました。
掲載誌がイケイケな感じの所だったらもっときわどい表現も出来たのかもしれないけど自分的によしみちゃんが性的に搾取もされず平和にHしてて微笑ましいです。
出典 TENMAコミックス『おるすばんはせつなくて』作品解説/あとがき(2007年 茜新社)
嘘もつかない純粋な存在(2015年)
作/知るかバカうどん
鬼畜系女性漫画家の知るかバカうどんが、2015年夏にコミックマーケット88で発表した同人作品です。
その後も同名タイトルの漫画を『コミックMate』に発表、こちらは単行本『ボコボコりんっ!』(メディアックス)に収録されています。
■知るかバカうどん・メディア初インタビュー
──今回の単行本『ボコボコりんっ!』は、タイトル通りに女の子をボコボコに殴るシーンがいっぱい出てくるよね。pixivには、女の子がリストカットしている作品や四肢切断も。本当に好きなシチュエーションはどれなの?
「えっ、知的障害者のレイプが一番好きかな」
──初っぱなの収録作が、知的障害者によるレイプ。この出版社は大丈夫なのかと思った。
「自分もそう思いましたよ」
──可愛いものが好きなのか、それとも可愛いものを壊すのが好きなのかがわからない。
「可愛いものが好きなんです。可愛いものが壊される姿に興奮することは、自分の絵でも他人の絵でもありません」
出典 【秘録的中編ルポルタージュ】初単行本『ボコボコりんっ!』女性マンガ家・知るかバカうどんの衝撃と圧倒「私、つきあった男には必ずボコられるんです」|おたぽる
担当編集の中沢は、知るかバカうどんに新たな機会を与えようとも目論んでいた。
暴力がなくても作品を描けると思った中沢は、知るかバカうどんに、ごく普通のエロマンガを描いてみないかと依頼した。そして、ネームが上がってきた。
「いちゃラブなのに、なぜかゲロなんですよ……」
「ダメでした。いちゃラブじゃなくなったー。どこにいったら、ええんやろ」
なぜ、ゲロを描いてしまったのか。そう尋ねると、素の表情で口を開いた。
「自分が思ういちゃラブは、単にセックスするものじゃないと思うんですよ。ゲロを塗りたくったり食べたりとか、ウンコ食べたり、オシッコ飲んだり、なんというか、痛み分けだと思うんですよ。そうじゃないといけない、と思ってるんですよ。それは……いちゃラブじゃないんですか?」
真顔での語りに、これまた返答に困っていると、担当編集の中沢が呟いた。
「うどんちゃんの、愛の表現は、最終的にすべてわかり合わなくちゃいけないんですよ」
出典 【秘録的中編ルポルタージュ】初単行本『ボコボコりんっ!』女性マンガ家・知るかバカうどんの衝撃と圧倒「私、つきあった男には必ずボコられるんです」|おたぽる
在日特殊小児伝きよしちゃん(1987年)
作/山野一
こちらは昭和62年に『ガロ』に発表されたものです。発表当時でも充分にタブーなテーマでしょう。良く各方面からクレームが付かなかったものです(前衛すぎる特殊漫画しか載せない事で有名だった『ガロ』が発表誌だったからでしょう)。
仮にメジャー漫画誌であったら、大問題の前に掲載さえ見送られたに違いないはず。何と言っても、テーマはずばり「障害児いじめ」です。
妻も亡くなり侘しい年金生活を送っていた元紙芝居屋の金子青造は、庭の枯れ木に出来た鳥の巣で雛鳥が鳴いているのを目にする。
それを見てもう一度生き生きとした生活を取り戻そうと思った青造は、一念発起して公園に紙芝居を持って行く。
青蔵が公園に着くと、小学生の女の子がリーダーとなって一人の障害児をいじめているのを見つける。
子供たちは障害児を滑り台の下に寝かせ、その腹を目掛けて次々と飛び降りるのだ。
障害児は無表情で嘔吐する。
これは洒落にならない。
思わず止めに入った青造は、子供達に飴玉を渡し紙芝居を見せてあげようとする。
しかし、
現代っ子にそんなものが通用する訳がない。
子供達は飴玉をまずいと吐き出し「飴玉に青酸カリを入れた」と因縁をつけ「残飯じじい」と青造を罵り袋叩きにする。
青蔵が助けた障害児まで暴行に加わる始末である。
散々な目に遭って家に帰ってきた青造は雛鳥に「わしの友達はおまえだけじゃ」と話しかけ部屋に帰る。
すると青造を追いかけて来た子供達はその様子を見た後、雛鳥をきよしに食わせる。
雛鳥の泣き声を聞いて表に出てきた青造は、子供達を前に再び暗闇に落ちて行く自分を感じた。
それは二度と這い上がる事の出来ない泥沼であった。
障害児、き○がい、これも山野漫画のレギュラーである。山野一は、彼らに人間としての生命の尊厳を持たない。
言わば昆虫と同格か、それ以下か。
ある話では畸形魚と呼ばれ、漁の対象となっている。痛めようが、殺そうが、食おうが、どうでも良い存在で、そのアイディンティティは、ストレス発散の為の物に過ぎない。
出典 荒岡保志の偏愛的漫画家論(連載41) - 清水正ブログ
この作品は1989年刊行の単行本『ヒヤパカ』(青林堂)に収録されていますが当然ながら絶版です。
「一人でも多くの人に読んでほしい!」とは口が裂けても言えませんが、お好きな方にはたまらないであろう作品集。再販はまず無理でしょうから中古品で入手するしかなさそうですね。
『危ない1号』第2巻(1996年) 山野一ロングインタビューより
──それにしても、山野さんの漫画を読んでてよく感じるのは、なんでこんなこと思いつくのかなってことなんです。たとえば、劣悪な居住空間にイラついてる貧乏な一家が穴掘ってって広々とした下水道に住む話とか。例を挙げていったらキリがないですけど、どうしていつもリアリティがあるくせに突飛なアイデアを思いつくんでしょう。
山野「それはわかんないですね」
──思いつこうと努力しているんですか。
山野「それはないですね。ただ、とことん抑圧されている人たちの姿を想像すれば……」
出典 『危ない1号』第2巻 吉永嘉明「ロングインタビュー 山野一」1996年 データハウス
さるのあな(1990年)
作/山野一
こちらはパワー系きよしちゃんの話です。
この作品は1993年刊行の単行本『混沌大陸パンゲア』(青林堂)に収録されてますが現在絶版です。
1990年に発表された「さるのあな」は、子供たちが穴に落ちた、巨根のき○がいを発見し、面白がって生うどんや犬などをその穴に放る、と言うストーリー。
出典 荒岡保志の偏愛的漫画家論(連載44) - 清水正ブログ
屋敷の一人娘めぐみは夜に女中のきみ子と父が交わっているのを見てしまう。
次の日、めぐみが友達と山へ行くと障害児のきよしが穴に落ちているのを見つける。
きよしは糞をそこら中に撒き散らしていた。
めぐみ達は、きよしをサル同然と判断し石を投げつける。
めぐみたちは、きよしの様子を見て面白がり、犬を投げ込むと、きよしは犬と交わり出す。
それを見て前夜のことを思い出しためぐみは、翌日に女中のきみ子を連れて来て穴に突き落とす。
すると六時の鐘が鳴り、きよしに犯される女中をほったらかして、めぐみ達は家に帰ってしまう。
70 :愛蔵版名無しさん:05/03/14 02:30:17 ID:???
山野一について特筆すべきは、「人間の業」の表現力だと思う。
「四丁目の夕日」では、(一冊の最初から最後まで)抗いようのない運命に 翻弄されてひたすら不幸になっていく普通の好青年を通じて人間の弱さ、儚さと、金持ちは結局はるかに有利な人生を送る事が出来るといった出来ればあまり見たくないような社会の真理が描かれている。
「どぶさらい劇場」ではそれらに加えて、純真な人間が宗教や麻薬に体よく利用されたり社会的弱者が足を引っ張り合ったり、そのせいでドツボにはまったりといった世界の描写によって人間の愚かさ、弱さ、嫌らしさ、醜さといったエグい部分をコミカルに、かつ抜群の筆力で炙り出している。
もしあなたが、そういった人間の「業」みたいなものを笑い飛ばせるなら山野一は超お勧めの作家です。
出典 山野一「四丁目の夕日」感想(※ネタバレ有) ( アート ) - 兎月電影漫画公司ホームページ「血だるまフェスティバル」 - Yahoo!ブログ