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GON!独占大スクープ!!『少女アリス』や『Jam』等エロ本史にさん然と輝く伝説のエロ本を産み出した、あの伝説の自販機エロ本出版社「アリス出版」は実在していた!! あの伝説のカルトエロ本『Jam』や『少女アリス』を今でもバイブルにしているエロ本編集者は多いのだ!

今、20代後半から40代までの健全な男子ならアリスのエロ自販機本で必まず一回はせんずりかましたはずだ!! 女ができるまでの聖母のようなあのアリスが実は今も相変わらずエッチな本を出版していたのだ!

今でもマニアから珠玉の名雑誌と評価の高い『少女アリス』。写真のハイレベルさもさることながら、高取英のロリータエッセイとか吾妻ひでおのマンガ、川本耕次のポエム等、けっこう好き勝手に編集していた。今では古書店でプレミア物。

GON!独占大スクープ!!『少女アリス』や『Jam』等エロ本史にさん然と輝く伝説のエロ本を産み出した、あの伝説の自販機エロ本出版社「アリス出版」は実在していた!! あの伝説のカルトエロ本『Jam』や『少女アリス』を今でもバイブルにしているエロ本編集者は多いのだ!

GON!』1996年2月号所載

アリス出版」というのは、かつてエロ本の主流が自販機本であった頃、名実ともにトップの出版元であった。その神話的出版社も、時代の波とともに人々の記憶の奥底に埋もれて消えつつあった。だが、実はアリス出版はたくましく活躍し続けていたのだった。

アリス出版はもともと、自動販売機で雑誌などを売っていた東京雑誌販売(東雑)という会社が、制作会社として作ったのが始まりだった。東雑系としてはほかにも、エルシー企画やアップル社などがあったが、品質と発行点数ともにアリス出版がトップとして君臨していた。

そのアリス出版について詳しく知りたい。そう思ったわれわれは、当時アリス出版でライターをしたことのある高取英氏(劇団「月蝕歌劇団」主宰)に話を聞くことにした。当初われわれは、既になくなったアリス出版の懐古談を予想し、自販機本の制作にかかわった人々の話を中心にしようと思っていた。しかし、高取氏の一言で、思いもよらない展開を見せることとなったのである。

 

アリス出版は現存していた!

高取氏からは、アリス出版にかかわった人々、今ではメジャーな雑誌や業界にいるビッグネームが、エロ本の制作に関与していた事などを聞いた。そして最後に、アリス出版の倒産について聞こうとした時の高取氏の発言は、われわれの点をつく意外なものだった。

「ええっ?、アリス出版はつぶれてなんかないよ。だれがこんなこと言ったの。少なくとも半年前には確かにあった。保証してもいい」

われわれは全員、アリス出版がとっくに倒産してしまったものとばかり思い込んでいた。しかし、そういえば、ただ巷から自販機本が姿を消したというだけで、だれかがアリス出版の倒産を確認したわけじゃない。それでは、まだアリス出版は活動しているのか。後日、われわれは高取氏の話を確認すべく、関係各方面へ打診した。その結果アリス出版は、確かに今も本を作り続けているという情報をキャッチすることができたのである。さっそくわれわれは、アリス出版を訪問することにした。

 

アリス出版を訪問する

高田馬場駅から歩いて10分くらいの、静かな住宅街のなかのビルの3階に、アリス出版はあった。われわれが若き日にその全身の情熱を傾けていたアリス出版は、確かにこうして現実に存在していたのだ。われわれはあたかも、かつて人生の指針を教えてくれた恩師に再会するかのような感動を覚えずにはいられなかった。

出迎えてくれたのは、取締役の有明銀次氏であった。有明氏は70年代半ばに入社して以来、アリス出版で本を作り続けている。

「昔は本当に自販機本だけでしたよ。全盛期の70年代の終わりから80年代のはじめにかけては、実話誌を6~7点に、グラフ誌は5点は出していましたね。A4サイズのグラフ誌も1~2点作っていました」

すさまじいパワーである。それも少数精鋭で、社員は多い時でも9人だったという。

「とにかく何でもやりましたからね。自分で撮影して、そのうえ原稿書いて、レイアウトまで一人でやっていたなんて言うのも珍しくなかった。安く上げるというのが絶対条件でしたからね。原稿料も安かった。だから仕事を本当に面白がってくれる人ばかりで作っていたような気がする」

これについては高取氏も、次のように述べている。

「文学くずれや芸術家くずれの吹き溜まりだった。インテリやセンスのいい人間なんだけど、メジャーになるにはまだいまひとつ。そんな人間がごろごろいた。音楽家くずれなんかもいたなあ。それに、アングラ世界の人脈で、これまたいろんな人間が集まってきた」

そういうボーダーレスな人材のごった煮状熊だったからこそ、パワーのある雑誌づくりができたのであろう。アリスの雑誌は数だけではない。記事は内容があって面白いし、写真のアングルやグラビアのレイアウトなども非常に凝った作りになっているのだ。

 

現在は編プロ

さて現在のアリス出版は、もっぱら編集プロダクションとして、いろいろな雑誌や書籍を作っている。制作物もエロ関係だけでなく、旅行やグルメといった一般の単行本やムックなども手懸けているという。

現在のウリはヘアヌードビデオに、「アリス文庫」というブルセラ系のミニ写真集に「ブルセラ少女隊」など伝統芸をしっかり死守。またビニ本復刻CD-ROMなども出している。

「機会があれば、またアリスのブランドで作ってみたいですね」

有明氏は最後にそう言って見送ってくれた。

 

アリス出版の制作物  昔と今

かつてのアリス出版の発行物といえば、まずB5判Sページオールカラーの写真誌である。自販機本といえばこの体裁が定番である。内容もバラエティーに富んでいて、女子高生、OL、人妻、SM、近親相姦、不倫覗き、オナニー、処女初体験、家出少女監禁、ナンパ、レイプなど、ありとあらゆるパターンが試みられている。シリーズ物も多く、「局部アップ」「少女の下着」「アリスセーラー」。「少女と官能」などが人気があった。おそらくスカトロなどのキワモノをのぞくメジャー系エロジャンルのすべては、アリス出版の自販機本のなかに見ることができる。まさにアリス出版こそは、現代につながるエロ文化の一大源流と言っても過言ではない。

また、見落としてはならないのが、「Jam」や「EVE」といった記事主体の実話誌である。こちらはまた改めて紹介しよう。

現在のアリス出版は編集プロダクションとして活動しており、とくにエロ関係にとらわれずあらゆる分野の出版物を制作している。エロ関係ではブルセラ少女隊、「アリス文庫」シリーズなどのほか、写真集とセットのビデオも制作している。また「ダイアナ」というレーベルで自販機用のAVも作っている。ただし、いずれもアリス出版というブランドはクレジットされていない。

 

嗚呼我が青春の聖母アリス賛歌

アリス出版。それはわれわれ70年代に学生時代を過ごした者たちにとって、決して忘れ去ることのできないブランドである。およそ正常で健康な男子生徒ならば、どこかで聞いたことぐらいはあっただろう。おそらく知名度としては群を抜くものがあったことは、疑う余地はない。中央公論社みすず書房を知らなくとも、アリス出版の名前はだれもが心に刻み付けていたのである。

その頃のわれわれは、人々が考えている以上に、また自分たちが思っている以上に、純情で気弱で、何よりとんでもなくスケべであった。しかし、ナンパできるような度胸も技量も知恵もなく、当然モテる奴などだれ一人いなかった。それでも、この肉体の奥底からマグマのように噴出してくる熱い情熱は否定できなかった。当時はまだ「ウレッコ」も「クリーム」もない時代である。エロ本のたぐいは、どれもどぎつい表紙のものばかり。普通の本屋では、たちまち本屋のオジサンに「あんた高校生だろ」と睨まれて、決して売ってはくれなかった。それに週刊誌のグラビアは差し障りのないヌード写真ばかりで、とても「実用」に耐えるものではなかった。唯一コンビニでわれわれの目を引いたのは「週刊エロトピア」のみという状況だった。その「エロトピア」も、現在のようなお洒落な表紙ではなく、「いかにもエロマンガ」という感じだったので、高校生であったわれわれにはとてもレジまで持っていく勇気はなかった。

そうしたわれわれの苦悶の日々に救済の灯となったものこそ、自動販売機で買うことのできる、いわゆる「自販機本」というエロ本であった。

そしてその自販機本の表紙やいちばん後のページには、ことごとく「アリス出版」という文字が印刷されていた。いつしかわれわれの脳髄の奥深くに、アリス出版という名が焼き付けられたのである。

だが、その自販機本を入手するのも、決して容易なことではなかった。自販機本を購入するには、当時大きく分けて4つの手段があった。

まず自動販売機で買う正攻法。

しかしエロ本自販機は夜になってライトがつかないと買うことができない。また、知り合いに見られたら一生の恥である。そのため筆者などは、小銭を用意し、自転車を手入れして、通行人のいなくなる頃を見計らって、フードつきのウインドブレーカーを着込んで買いにいったものである。それでも運悪く通りすがりのOLに指をさされて笑われたときのことは、今でも記憶が鮮明によみがえる。

もうひとつは通信販売だ。

だが、1冊千円と高かったので、あまり利用しなかった。

次は古本屋での購入。

なんといっても安いのが魅力だった。しかし、モノがモノだけにだれがどんなふうに触ったのか分からないエロ本を買うのはちょっと気が引けた。それでも、筆者は近所の古本屋で1冊2百円前後で大量に購入したものである。

最後に開拓したのは、神田の専門店で買うことだった。

とくに芳賀書店は安く、7冊4百円で新本を買った憶えもある。高校、大学、そして社会人になってからと、必死で集めた自販機本も、今では手元に残るのはわずか5百冊程度にすぎない。内容は、おそらく今のエロ系雑誌に比べれば、決して高いレベルとは言えないかもしれない。だが、この自販機本には、当時を知る者でなければ理解し得ない、独特の味わいを十数年経た今感じとることができるのである。(文/橋本玉泉)

 

●アリス続篇として、遂にあの「Jam」の全貌を徹底解剖! 今春GON!誌上で大特集するぞ!