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因果者列伝・村崎百郎インタビュー(月刊漫画『ガロ』1993年10月号「特集・根本敬や幻の名盤解放同盟」題して「夜、因果者の夜」から)

因果者列伝・村崎百郎インタビュー(工員/江戸川区/O製作所勤務・30歳)

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青林堂『月刊漫画ガロ』1993年10月号「特集・根本敬幻の名盤解放同盟」題して「夜、因果者の夜」

根本敬は言った。「去年初めて神(天・自然)のお導きで村崎さんに会った時、「今だから言えるけど、俺は昔下着泥棒やら強姦やらさんざんやったモンです。」とか、「今でもアパートの住民のゴミを盗んで定期的に調べているんです」等々の話を聞き、初対面ながら「この男は信用できる!」と確信した。

信じられる男の発する熱に、因果者の誠を感じた。自ら進んで業を背負いつづけるものにこそ真理の光を見るのだ。よしこの人の湖に飛び込もう。幻の名盤解放同盟は思った。

■雪焼けした女の健康美

生まれは北海道、わりとまともな町で育ったんだけど、オヤジが公務員で転勤が多くてね、小三くらいの時に過疎の村へ引っ越した。そこが物凄いところでね、村ってのはすごく陰湿なんだ、貧しくて、人の成功はねたむしな、ほんとに狭くて、プライバシーなんかねえんだよ、電話が一応通ってたんだけど、回練が少ないんだかなんだか、受話器を取るとよその家の会話が筒抜けなんだよ。親機と子機みたいに(笑)どこの家の誰が、どういう服着て、どういう飯食って、どういう糞してるか、下手すっと肛門のシワの数まで知ってンだよ(笑)。そういうとこだから、オレはヨソモノだろ、いじめられる対象でしかないわけ。とても言葉では言い尽くせないようないじめを受けたね。村じゃもうクラス全員が敵なんだよ。「オレだけはおまえの友達だ」っていうような顔をして近寄ってきても、二人しか知らないはずのことがクラス全員に知れ渡ってたり、だから(在日)朝鮮人の気持ちとかすごいよく分かるんだよ。ケンカするにも「負けたら生きて行けない」みたいな感じだろ。そりゃケンカも強くなるよ、やり返さねえとこっちが殺されンだから。ヨソモノに対しては思いきり冷たいんだけど、村ってのは妙な共同体意識みたいなモンがあるんだよ。学校焼いちゃったのがいたんだよ。みんな犯人知ってるんだ。下手すると通りの犬まで知ってるってくらいなのにみんな隠すんだよ、警察にばれたりしたらソイツの一生終りだろ。そういう時はかばい合うんだな。オレみたいにとことんいじめを受けたヤツって二通りに分かれるんだ、世の中が嫌になって自殺するタイプと、アレイスター・クロウリーみたいに世界そのものを憎み出すタイプ、オレは後者の方でね。友達が誰もいなくて完全に孤立してたから、よく一人で海とか山をさまよったね、山奥の誰もいないところで何時間もポーッとつっ立ってたりした。耳を研ぎ済ましてると、変な声とか、何キロも先で雪が降ってる音とか聞こえてくるようになるんだよ。

 

■歴史とは性交の具現なり。

小学校の時、日本が実は戦争に負けてたっていうのを知ったのはショックだったね。ジイちゃんに聞かされて、人生における最初の痛恨事だったよ、あれは「丸」なんかみながら軍歌見えたりしてたもんな。でも、従軍慰安婦問題にしてもそうだけど、ああいうのを知っても別にショックじゃねえんだよ、戦争に強姦はつきもんだろ。占領後の強姦とかがあったからこそ、日本軍は強かったんじゃないかね。だからオレは兵隊が強姦してたってより、戦争に負けてたって事の方がショックだったね、負けたのになんで平和なんだろう。周りはノウノウとしてるんだろうって不思議でならなかった。

小学校五年の夏に海で溺れかけたんだよ。話せば長くなるからはしょるけど、所謂神秘体験をしたわけよ。見ちゃったんだ。どうして助かったか分かんないんだけど、それからだね。凶悪になったのは(笑)。いろんな制約が全部無くなっちゃったんだよな。「人生において、やっちゃいけないなんてことは実は何もないんだ」ってことに気付いたわけだ、やっぱり一回死にかけると「もういつ死んでもいいんだ、後の人生は余録だ」って思うだろ。ホント、やっちゃいけないこととか、超えちゃいけない一線なんてのは実はねえんだよ、(マイクに向かって)オマエ分かってるか? 殺人だってなんだって、人間ってのは生き物殺さなきゃ生きて行けねえんだよ、魚殺すのと人殺すのとどこが違うんだよ。

 

■若きナウマン象は美しく青白きメロディに憑かれた

オレの戦法ってのは、自分がドロドロになりながら相手もそれに引きずり込むっていう最悪のモンでね、いつのまにか体格も良くなってたな、大勢にやられても、その夜一人々々の家へバット持って復讐に行くんだよ。家族団欒のところに、団欒ってのが狙い目なんだ(笑)。寝てる時でもなんでも、玄関破って入ってったから、キチガイって言われてたね。

中学のとき、下級生で気に入らないヤツがいてね、そいつが盲腸にかかったんだよ、退院してた日にシメるわけ(笑)。道で待ち伏せて、思いっき腹にケリ入れるんだよな(笑)。それだけならまだいいんだけど、それに加えて言葉で痛めつけるわけ。うずくまってるところを。自分が言葉でいじめられたから、相手にも言葉でいじめるんだよ、アレはちょっと悪いことしたね(笑)。一度ズタズタにして、泣きながら家に帰ってく奴を先回りしてそいつン家の前でもう一回ぶん殴ったりたこともあったな(笑)。高校進学率は五割以下だったな、もう最低レベルのバカばっかり、小六でかけ算九九が言えねえようなヤツラばっかりなんだよ。高校も近くにあったのはどうしようもないバカ学校で、五教科百点満点でトータル百二十点も取れば合格。一枚科三十点も取りゃ合格なんだよ。英語はみんな零点だから、実質的には四教科各々三十点で合格か(笑)だって文盲がいるんだよ。三十くらいの漁師だったけど。

 

■愛と平和の調べは己が手でのみ作られる

性の目覚めも特殊だったな、田舎のガキってのはみんな結構、親のセックスとか見ちゃったりするんだけど、オレはなかったな。海辺の町だから夏になると観光客が来るんだよ。海水浴に、そういうヤツが文化を持ってくるわけ、つまり、海岸に打ち上げられたり、捨てられたエロ本からそういう情報が入ってくる。で、観光客ってのは都会からやって来て、大自然の中でやっぱり一発キメたくなるモンだろ。使ってないトンネルなんかのところでやってたりするんだよ。だから「岬にカンコーが来てるぞ」っていうとみんなで見に行くんだな、ところがアイツらバカだから見つかっちゃうんだ(笑)。小学五年ぐらいの時、たまたまSM誌を拾ったんだな、これでオレの性的嗜好は決まったね(笑)。今でもそこに入ってた小説のストーリーは克明に覚えてるよ。起承転結の見事な非常にできのいい作品で、それからは町に出るたびにSM誌買い漁ってた。グラサンかけて。もうセックス・イコールSMになったわけだ。

同級生の山田ってのが結構いいオンナだったんだけど、高校卒業する頃には三千円で売春しててよ、三千円で売春して、その金でクルマの免許取ったんだよ、乗らせちゃ乗ってたわけだ(笑)。近くの農業高校では相場が一回五百円ってのがあったけど、とんでもないオンナばっかり(笑)百円でも御免だっていう。

 

■植物図鑑に舌打ちするベジタリアン女と動物図鑑がズリネタの獣姦症男が出会って恋の花咲く。

クマが出るんだよな、ヒグマ。春先ンなると山菜採りなんかが襲われるんだ。毎年何人かクマに殺されてるんだよ。同じクラスの奈美子って女のオフクロも裏山でクマに殺されたんだけど、そういう体験して大きくなったとき、例えばの話、ポーイフレンドにクマのねいぐるみプレゼントされたりしたらどうすンだろな(笑)。クラスの中で七、八人は片親だったり、両方いなかったりだったな。漁師とか土方が多かったから、事故とかヤクザに刺されたりで死ぬのもいたしな。

ヒグマ撃ちの後藤ってオヤジがいてよ、毎年何頭かしとめるんだけど、コイツの持ってるのが村田銃なんだよ。先込めの火縄銃。何でそんなの持ってんのか分かんねえんだけど(笑)。村の英雄で、そこン家に行くとクマが軒下にぶら下がってンだよ。火縄銃だからもう一発勝負だな。失敗したら死ぬわけだよ。クマってのは目をにらむと襲ってこねえんだ。だから目をそらさないで出来るだけ近付いて、眉間を狙うんだな。他の部分の毛皮に傷が付くと安くなるから。子グマを動物園に売ったりもしてた。そいつがある冬の朝、自殺こいたんだ。田んぼの真中で、雪が真っ白く積もってる田んぼの真中まで歩いてって、村田銃の銃口を口に入れて引金引いたんだな。田宮二郎とおンなじよ(笑)。雪の中に真っ赤な花咲かせて、まるで日野日出志のマンガだよ(笑)。みんなで「クマのたたりじゃねえか」って噂したんだけど。

 

■出し入れの関係代名詞は餅つきペッタンの水平線の向こうに見える自分自身の尻の動き

高校ン時は空手やってたな。一意専心ってヤツ。空手を志したきっかけは強姦目的(笑)。もう悪の権化だね。よくテレビなんかで、悪党がオンナに中段突き一発かまして気絶させるってのがあったろ、あれを見て「いける」と思ったんだよな、ありとあらゆる悪いことをしてやろうと思ってたから、人間の、ホントに最低の醜い姿を知ってこそ、その美しさも分かるんじゃねえかっていう気持ちがあってね、でも結局、強姦はやってないんだ。何でか解る? オレはその後のフォローもちゃんとしてるからさ、初めはアレでも、フォローさえすればそりゃ必ずしも強姦とはいえねえんだ。

人生最大の痛恨事ってのが初体験なんだけと、つまんなかったんだよ、きっきも言ったけど、初めに目覚めたのがSMだよ、セックスに対して過大な期待があったんだな、擦り切れるほどオナニーしてたし、ヤカンに水を入れてカリの先に引っかけて、勃起力を鍛えてたんだよ(笑)。そしたら鋼のようなチンコになっちゃったんだな、全然良くなかったんだ。「オレはこんなものに夢を持ってたのか」って、例えようもない喪失感を持ったわけだよ。悩んだね。それでもっと数をこなせば分かるんじゃないかとか、オンナによって色々違うかも知れないと思って色んなオンナとやりまくったわけよ、狂ったように。

オンナとしけ込んでハメ狂ってる時にじいちゃんが死んだんだよ。葬式に出る時間が惜しくて、オンナとやってたんだよ、勉学が忙しいって言ってセックス覚えたての頃は、一日三回はやってたから一年で千回はやったね、それとは別にセンズリもやってたからな。その時のオンナはデバカだったんだけど、そいつの寮に夏中居座ってよ、寮を占領して(笑)。中には一回家にオレを上げてしまったためにその後四年間住まれちゃったってオンナもいたよ(笑)。オレ両腕に傷があるんだけど、これヒステリーのオンナにやられたんだよ。ヒステリー起こすといつも腕を押さえるんだけど、そうするとオンナに引っ掻かれるんだよ。いつもおんなじ場所だからいつまでたっても傷が直らなくて、とうとう消えなくなってな。でもこの傷がオンナに付けられた傷だって見破ったヤツがいたよ。板橋の工場に流れてた奴で「分かる?」って言ったらソイツが「オンナに付けられた傷は消えねえんだよ」って(笑)。

オンナっていうのは、誰でも自分だけの宝みたいなモノを持ってるんだよな。それは例えばアイドルであったり、ミュージシャンだったりするけど、今でいえばエックスとか色々あるだろ。それについて理解を示してやったりするとコロッと引っかかるんだな、「ワタシのことを分かってくれる」って。で、オレは相手が心の扉をほんの少しでも開けるやクイッとチンポをネジリ込んじゃうんだよ。逆に別れるときは、オンナの好きなものをけなしゃいいんだ。楽なモンだよ(笑)。それでも駄目ならそいつの三代前まで遡ってひい婆ァちゃんから始まって、犬猫に至るまで一晩かけて微底的にある事ない事こきおろすワケよ。そこまでやればほとんどのオンナは「もうやめて」つって発狂するわけよ。不通の人間社会にゃ言っちゃいけねぇって事があるけど、そこをいやと言うほど責める訳だもんな。

 

■血と汗と唾と叫び声と透明ちん汁。

やるときは、早くイカないコツってのがあるんだよ。やってる時に親指で踏んばると早くイッちゃうんだな。やってみな。あと人に聞いた話なんだけど、オンナとつき合ってて、やる時は、月に一、二度はコンドームなしでナマでやったほうがいいんだってな、「そうするとオンナは変るよ」って言われたんだけど、アレホントかね、色っぽくなるって言うんだけど。

どんな美人でもずっと一緒にいると飽きるモンだよな、二年も住んでりゃ近親相姦みたいなモンだよ。そうなっちゃうともうやる気も起こらなくなるから、紙袋を頭からかぶせてエロ本見ながらやるんだよ、エロ小説の時もある。でも、動くから活字だと読みにくいんだよな、まあ、もちろん相手には分かんないように縛ってからやるけど(笑)。昔の殿様なんか城下のオンナの初夜権を持ってたりしたろ。オレの好きな話で、そういう殿様はプスでも頭から袋かぶせてやったっていうのがあるんだけど(笑)。エレベーターの中でオンナを押し倒したこともあったな、人が来て結局出来なかったんだけど、大体、会った瞬間に分かるんだよな。「このオンナとはやるな」ってのが、「このオンナを押し倒ねえとオレの人生は先に進まない」みたいな。例えば不良同士で会った瞬間にムシが好かねえってのがあるだろ「コイツとはいつかやるな」という。あれと同じだよ。オレの場合、ムシが好かねえと思った瞬間に手が出るんだな、自転車のハンドル持って後輪で殴るって攻撃が得意だったね。

 

■森羅万象ことごとく我に帰れ

ものすごい執念深いんだよ、オレ、マムシの百倍は執念深いね(笑)。オレの好きな話にこういうのがあるんだけど、南米かどっかの。隣どうしの家で、樽かなんかが風で転がって片方の家の囲いを壊したと。それが元でケンカが始まって、隣どうしで代々ケンカが続くわけだ。ある時、片方の家からものすごく強い男が出て、もう片方の家は全然かなわなくなったと、そうすると弱い方は奴隷のように暮らすしかないわけだよ。でもいくら強いヤツでも年を取るだろ。人間、寿命ってモンがあるから。で、五十年、六十年ジッと耐えてヨボヨボになったところを狙って殺すと、その話を聞いたときは「これだ」と思ったね(笑)。まだ子供の頃だけど、オレも何か恨みを持ってもその場では絶対仕返ししないんだよ二年、三年待って、それからアクション起こすから。ホントに、まずソイツと親友になっちゃって、その後で裏切るとかな。恥辱を受けたりすることが生きるエネルギーになってンだよ(笑)復活こそ我が命(笑)。

東京に出てきたのは十八の時か。そン時オレすごいカッコしてたんだよ。部屋借りようとして不動産屋行って、アパート紹介してもらったわけだ。電話で大家と話したときは感じ良かったんだけど、実際に行ってみたら大家がオレの顔見るなり、「もう決まっちゃいました」って。オレは「そうなんですか」ってその場は引き下がるわけ。「それからそこ行くんで一万以上金使ったよ。それも二年くらい経ってから。そこに通い詰めてね、ありとあらゆる嫌がらせをしたね。だから人には親切にした方がいいよ(笑)。ホント。どんなヤツがいるか分かんねえんだから。

引越しのバイトしてた時に、ある店の前にちょっと荷物置いたら、そこのババアにイチャモンつけられてね。それも住所と店の名前はしっかり控えて、後で嫌がらせしたね(笑)。そこの近所の家に電話をかけて「あそこの店のモノですが、もうすぐクビになるんですあそこのババアお宅の悪口言ってますよ」とか、税務署に「あそこ随分脱税してるみたいですよ」とか。しかし、何年も前に一回怒ったばっかりにこんな仕打ちを受けるなんて……想像もつかねえだろうな(笑)。だからオレはその場で負けようが何しようがイイんだよ。ただ、オレは嫌なことも忘れないけど親切にされたらそれは一生忘れないよ。情、さ。そういう部分はちゃんとスジ通すよ。それが間違いだっていうのは自分自身気づいてるけど、間違いだからやめるって気はないね。結果的にそれで地獄に落ちても悔いはないと思ってるから。

ガキが大きくなるの待ってるヤツもいるな。基本的にガキには手を出さないんだけど、中学生ぐらいになれば体格は一人前だろ。ある日、自分の息子がボコボコにぶん殴られて帰ってきたらやっぱりショックだもんな、直接本人を責めるより、ソイツの愛しているものをぶっ壊す方がダメージでかいだろ。

前、越してさ、夜その辺徘徊してたら犬に吠えられたんだよ。頭来てよ。でも顔につながれてるものに手を出すのはフェアじゃねえだろ。そのかわり深夜そこの家に行くんだよ。そうするとイヌは吠えるだろ、オレはすぐ走って隠れるわけ、あんまり自分の家のイヌが吠えれば飼い主は怒るだろ。イヌに「うるせえ」って。オレは何度もそれを繰り返して(笑)。そうすると回りの家にもすごい迷惑かかるだろ。犬の立場はどんどん悪くなるわけだ。「あの犬また吠えて」ってかわいそうにな(笑)。そういうオレの恨みの念が強かったからか、すぐそばで殺人事件があったんだよな。その犬のとこ行く時、いつも通ってた私道の真横、七年位前かな、家が皆東大で、ジイさん名誉教授で大学入れない孫がいて、そいつに刺されたって事件。あの家もよくそこの犬の鳴き声聞いてたはずで、オレのせいもあったのかも知れねえな(笑)。でもそういうひどいことをすればするほど、オレみたいなヤツが他にもいるかも知れないっていう恐怖感も感じるんだよ。だから一つ言っときたいのは、オレは人の何十倍も臆病なんだよ。臆病だからこそ、相手を執ように責めるんだな。それは後で復讐されるのが恐くてたまンないからなんだよ。

 

■天の羽衣をまとった漬物石が座るところ泉湧く

アパート入ったら入ったで、一ヶ月くらいは住人のゴミ漁りを欠かさなかったね。だって回りにどんなヤツが住んでるか不安だろ。そうすると「今、上にいる浜田ってヤツは一昨年の十二月にバイクの事故にあって、それが元で会社もやめて彼女とも別れた」とか「さらにSMマニアで女王様雑誌を毎月買ってる」とかいうことまで全部分かるんだよ、収入から勤め先、電話番号まで、だから自分の名前の入ってるものなんか簡単に捨てるモンじゃないよ、ホントにどういうヤツいるか分かんねえんだから(笑)。

寺山じゃないけど、よく夜道を徘徊したりしたね、新宿、早稲田、神楽坂界隈はよく歩いてたよ。ゴミの山からよくエロ本を漁ってた。部屋にものすごい数のエロ本がたまってたよ。もうエロ本の海(笑)。首までエロ本につかっちゃって、捨てるのももったいなくてね。捨てて誰かに拾われるのもシャクだし。だから捨てるときは小便かけて捨ててた(笑)。イヤなヤツだよな(笑)。ゴミもいつも拾ってると外見で大体何が入ってるか分かるようになるんだな。エロ本捨てるヤツって決まって袋を密封するんだよ。ガムテープで貼って。だから持った時の重さで「SM誌だな」とか「これは写真集」とか分かるんだよ。同じエロ本何度も拾ったりしてな(笑)。古本屋に売って結構金になってた。ゴミの中に『ウイークエンドスーパー』や『HEAVEN』『Jam』なんかがあるとちょっと嬉しいんだよな。パイプ拾ったこともあったよ。夜中に徘徊してると当然オマワリの不審尋問受けるんだけど、コンビニの袋に何か入れて持ち歩いてると何も言われないんだよ。夜中に何も持たないでうろついてるのはやっぱり怪しいもんな。だからオレ、エロ本は金出して買ったことないね。オンナとやる時も買うくらいなら強姦した方がいいと思ってるから(笑)。金出してやるのはオレのプライドが許さない(笑)。

 

■夕日に向かって走ったら製粉工場

パイトは大体、主任とか社長ぶん殴ってやめてたな。東京に出て来てから半年ぐらいはメチャクチャだったね。二十前までは何やっても名前が出ないと思ったから、一通りのことはやらなきゃって気持ちはあったね。

板橋の製粉工場でパイトしてたんだけど、週給制だったんだよ。そういうとこって流れモノがいっぱい来るんだよな。新潟出身の鈴木ってヤツがいたんだけど、当時二十九だったかな、田舎から出てきてるから、「都会のモンにだまされるか」って靴下の中に金を入れてるようなヤツで趣味も全くないんだよ。だいたいああいう所に流れて来るヤツって趣味がなくって、部屋へ帰って野球見て寝ちゃうようなのばっか、でも鈴木はそんなこともしないの、話題なくって、天気の話繰り返すしかないんだよ。それがある時、故郷に新幹線が通るってんで鈴木が一念発起して上越新幹線の駅名全部暗記してよ。それから、顔会わせると、そればっかり繰り返すんだよ、上野、○○、○○ってさ。

こういう工場の休み時間なんていうとみんなもうエロ話しかしないんだよな。たまに勘違いして本読んでるヤツなんかがいるんだけと、かえって下品なんだよ。TPOをわきまえろってンだよ。南方帰りっていうオヤジもいたな。戦争で二万人だか送られて六人しか生き残らなかった中の一人だって言うんだよ。そうなっちゃうともう何にも恐くねえんだな。なにしろ人の肉まで食っちゃったって言うんだから。人の肉食うと体中熱くなるんだってな。そんな人だからヤクザなんか全然恐くねえんだよ。「クギ一本あれば人は殺せる」って言うんだな、ホントに世の中にはそういう人もいるんだから、回りに気を使って礼儀正しく生きてた方がいいよ(笑)。

工場に「荒川少年強姦団」みたいなのがいたんだよ。族アガリの連中で、すごい礼儀正しいし仕事はマジメなんだけど、小学校五年で輪姦してンだよ(笑)。エロ本とか見る前に、もうハメちゃうんだよ。下町のガキで、中学の頃から族に入って特攻隊長とかやってたようなヤツラだから。それでいてオフクロには弱かったりして。すごいワルなんだけど、無邪気でさばさばした連中でな。でもアイツラってマンガ読まねえのな。『ビーパップ』とか、ああいうマンガはやっぱり頭ン中で考えたモンだろ。コイツらのナンパ方法ってのが面白い。気に入ったオンナが歩いてると自転車でぶつかってくンだよ(笑)。で、倒れた女のとこ寄ってって「ゴメン、お詫びしたいからお茶でも」って(笑)。で、やっちゃうんだよ。もう一つ、「土手マン」ってのがあるんだけど、オンナをだまして車に乗っけて、荒川の土手に連れてくるわけだ。あそこってのはもう無法地帯で、夜なんか何があるか分かんねえらしいんだよ、地元のヤツでも夜は出歩かないようなトコ。そこにきて「ヤラセロ」って言うわけ。「やらせなきゃここに放っぽって行くぞ」って(笑)

コイツラで「中森明菜強姦計画」ってのがあったらしいんだよ。「アキナと一発キメるんだったら二、三年くらってもいい」ってヤツラなんだから「車を捕まえたら回りを取り囲んで一人ずつやろう」って(笑)。結局やンなかったけどその理由が「スケジュールが分かんないから」だって(笑)。もうしようがねえよな(笑)。

もう悪いことばっかりやってるんだけど、妙に情にモロイとこもあってな、フィリピンパブなんかのオンナに本気で惚れちゃったりするんだよ。やっぱり日本のオンナって生意気だろ。東南アジアのオンナの方が何にも知らない分、素直だもんな。だから国際結婚したヤツもいたよ。アレ大変なんだよ。偽装結婚じゃないって証明するために何度も外務省に足運ばなきゃなンないしな。だからそういう部分はマジメなんだよ。純愛コイてるんだから、真剣な顔して「英語教えてくれ」って来たりしてな、小五でマワしたとは思えねえよな(笑)。

 

■屋根も壁も無いメリオ

メリオってヤツがいたな。高校時代にバイクの事故で首がめり込む程の怪我して、記憶を失っちゃったんだよ。首がめり込んだから、みんなから「メリオ」って呼ばれてたんだけど(笑)。もう記憶がないし、テレビの歌番組ぐらいしか楽しみがないんだよな。あとエロビデオ。でもエロビデオを借りに行っても、ものすごいケチで選ぶのに二時間ぐらいかかるんだよな(笑)。体もちょっと動かなくなってるんだよ。やっぱりちょっとトロくて、いつまで経っても製粉の機械の操作が覚えられないんだよな。それでいて、人が真面目に働いてる横で下らないダジャレとかちっとも似てねえ芸能人のモノマネやったりするんだよ(笑)。悩みのねえヤツ(笑)。性欲もストレートで、エロ本とか見せると途端にボッキするんだよな。横で見てると「ムクムクムクーッ」って(笑)。初体験は池袋のソープ行ったらしいんだけど、話聞くとどうもスマタでやられたらしいんだよな。本人はアナルだって言うんだけど、「ヌルヌルしてた」とか変なこと言うんだよ(笑)。その話聞いて、みんな「こりゃスマタだな」と思うんだけど、メリオにはそうは言わねえんだよな、夢を壊しちゃいけないと思うから(笑)。そういう思いやりはあったね(笑)。だって何ヵ月も前から情報誌買って、ネエちゃんから値段から全部チェックして、やっとボーナスもらってソープ行くようなヤツだよ。そりゃ言えないよな。カラオケに行きゃ、そこのオンナに惚れ込んで仕事中に工場から電話かけるしね。後ろでガチャコンガチャコンいってるとこで(笑)。でも店には一度しか行ってないんだよ。ケチなヤツでき、コイツがある日、腕マクラして寝てたら血の流れが悪くなって、片腕の神経が死にかけちゃったんだよ(笑)。で、片腕がロクに動かなくなっちゃった。アレはかわいそうだったな。

 

■休息無き肉体の赤痢菌がエイズ菌にお早うと大声で挨拶

原田くんっていう、水産高校出身で、土木会社で現場監督やってたヤツがいたんだけど、資格試験目指して、夜学に通いながら昼は工場でバイトしてたんだよ。一緒に工場のフロ入ったらすごいんだよ。夏なんか傷だらけで。どうしたのか聞いたら、ヤクザに、割ったビールビンで腹かき回されたって。ポディビルとか空手やったりして体はたくましいし、勉強もものすごいするんだよ。

現場監督時代に結構ヤクザの嫌がらせを受けたりしたらしいんだけど、現場の交差点の真中にトラック止めてそのまま逃げたりするらしいんだよな。気に食わない現場に日本刀もって殴り込んできたり(笑)。ある日作業員が斬られたんだって、作業員は「もう死んだ」と思ったろうな。そしたらそれが実は峰打ちで、ヤクザのジョークだった(笑)。作業員も色んなヤツがいて、異常に働くヤツがいたらしいんだよ。休み時間も取らずに、なんでかと思ったら便所でシャフ打ってたって(笑)。すぐクビにしたって言ってたけど(笑)。トラ

ックの運ちゃんとかシャブやってるの多いだろ。それでガンガン働いて日本のGNPだいぶあがってると思うけどな。

ソイツのアパートに六、七十のパアさんがいたんだよ。そのバアさんに十歳ぐらい歳下の愛人がいて昼間っからハメ狂うらしいんだな。その声がアバート中響き渡るようなものすごいモンで、再現してくれたんだけど。「ダッメーッ!ダメダメダメ、ダメーッ!」って木造二階のアバートにこだまするんだって、たまにソイツの部屋にも差入れに来たりしたらしいんだよな。老人の性ってのはあるんだよ(笑)。ソイツに聞いたんだけど、漁師ってのは仲間ウチでホモが発覚したりすると海に投げ込まれても文句言えないんだってね。遠洋漁業なんかにずっと出てて、ホモがいたらちょっとな(笑)。軍隊にしても、そういうのがいたら収拾つかなくなっちゃうもんな。

警備員のバイトしてたことがあるんだけと、工務警備の方、トラックの運ちゃんってのはイイ味出してるオヤジが結構いてね。競馬オヤジとか、搬入搬出で待ってる時に話かけてくるんだよ。「にいちゃん、競馬やんないの?」とか。そういうオヤジって言うことがデカイんだよな。「オレは九レースまでで二百万勝ってても次のレースに全部ぶち込む。それが男ってモンよ」とか、結構うたうんだよ。トラックっていっても二トントラックのオヤジだよ。四トンや七トンじゃなくて結職情けねえヤツ(笑)。

現場の休み時間っていうと、みんなで集まって、当然のようにエロ話に花が咲くんだけど(笑)。社員旅行でコンパニオンを呼んだらしいんだよな。コンバニオンってのは望まれればいやらしいことはするけど、膣にだけは入れさせないらしいね。それ以外だったら何してもいいって言われてできる限りのことは全部したっていうオヤジがいたけど(笑)。

 

■突出したヌメリとツヤの持主

大学の友達は結構豪快なのがいたね。高校時代に本屋で万引して、それを売った金でソープばっかり行ってたヤツとかね。ソープ行けるくらいの金額分、いっぺんに万引するんだからハンパじゃないよ。コート着て行ってやるんだけど、全集の端から端まで万引したんじゃねえかっていう(笑)。ソイツは大学時代、傷痍軍人ルポルタージュかなんかやったんだよ。上野のヤツはみんなニセモノだったって(笑)。そういうヤツらと一緒に身障者の差別標語みたいなものを作ってたね。そういう思考ってみんな口には出さなくても持ってるものだろ。それをあえて口に出してみる。みんな笑ってるんだけど、実は心の中で泣いてるんだよな。どん底っていうか、底辺の奥の奥まで堕ちなきゃ、上の世界も視られないんだよ。身をもってドボンと下まで沈まなくちゃ、そういう覚悟がなくちゃいけねえと思う。

「逆さ十文字キリ揉み」っていうへんなオナニーの技を使ってるヤツがいたな。手を交差して、小指でカリをしこくらしいんだけど、あんなので気持ちいいのかね(笑)。鏡を二枚使って、片方に自分のモノを写して、もう片方にそれを反射させて、鏡に写った自分のものをなめるっていうのもあったな。「なめられてるような気持ちになる」って言うんだけど(笑)。

 

■納豆の中にニシキ蛇のうろこの見える朝を迎えて

オレ、喜怒哀楽って言葉が大嫌いなんだよな、人間の感情ってもっと複雑なモンだろ。言葉で表現できない感情もあるはずだよ。普通のマンガでつまんないのは、善いモンと悪モンがステロタイプ化されちゃってるだろ。現実はそんなもんじゃないよな。悪党でも家ではいいオヤジだったり、普良な顔してても、裏じゃとんでもないことやってたりするだろ。そういうマンガばっかり読んでちゃ、想像力の欠如した人間しか生まれないよな。ある一つの事象を見ても、それに対する精神のリアクションってのは無限にあるだろ。いいオンナを見れば、純粋に「ああ、キレイだな」と思う半面「ねえちゃん、一発やらせろよ」って考えも起こるもんだよな。それはどっちが正しくてどっちが悪いってモンじゃなくて、両方とも真実なんだよ。

エロ本とかエロビデオが性犯罪を助長するとか言うヤツがいるだろ。あんなの絶対嘘だよな。そんなものがなくたってやるヤツはやるよ。逆にそういうモノでズリセンかけば、とりあえずその場は収まるだろ。「裏のネエちゃん犯してやる」って計画立てて、「やるっていってもいきなり入口の所で出しちゃ悪いから、一発抜いてから行こう」と思って一発出せばその場は収まっちゃうんだよ、「ああ、オレは何を考えていたんだ」って(笑)。

アメリカなんかでよく猟奇的な事件が起こったりするだろ、地下室に何年も開じ込められたり、そういう事件を聞くと、今、全米でどのくらいの人間が監禁されてるのかとか考えるよな。実は日本にもいるんだろうな、いたる所に何か感じるんだよ。解るんだよオレには、

頭ン中が時々ラジオになるんだよな、周囲数キロ四方の音がいっぺんに聞こえることがあンだよ。三浦百恵を襲ったヤツがいたろ。アレも聞こえたな、電波が来るんだよ、「神の声が聞こえる」って教祖になるようなヤツもいるけどな(笑)。聞こえてくることを真に受けてるとそうなるンだよ。聞こえること自体は必ずしも狂ってるとは言えねえと思う。でも、それに耳貸す様になったら、オシマイ。キチガイになるんだ。オレの所にも色ンな奴から来るけど、オレは相手にしないね、前どっかで浮浪者が小学生殺した事件があったろ。「水道の蛇口ひねったら命令が来た」って、全然不思議じゃねえもの、オレにすればP・K・ディックっていただろ。SF小説家の。アレもヘンな声がよく聞こえたりしたらしいけど、やっぱり幼児期に虐待を受けてたんだ。

 

■名も知らぬ花の香りの行方

二十五、六歳になった頃、欲とか、悪への指向性みたいなものが一気に失せちゃったんだよな。「もうやってられねえや」と思って。サルじゃねえんだから、早くスケベオヤジになりたいね。女子社員のケツを自然に触れるような。こないだセクハラで訴えられた熊本市議かなんかいただろ、胸まさぐった。ちょっと打たれるモノがあるよ。

誰にも話したことなかったんだけど、昭和天皇崩御された時、実はオレの夢枕に立たれたことがあったんだよ。で「私のことを思いやるように他人にも接しない」って仰って涙が出たね。実際そうなんだよ、皇太子と雅子さんの報道見てもすごいだろ。みんな気を使ってよ。特定の個人にそれだけ気を使うんだから、他人にもそれだけ気を使って碁らせば、世の中もっと争いは減るはずだよな。あんまり恐れ多い話だから今まで人に言えなかったんだけど。でもホントそうだよ。思い出すだけで衿を正したくなるね。その時はさすがに、しばらく復讐も忘れようかと思った程だったから(笑)。それから多少、落ち着いたところはあるね。だから、ホントに他人の立場になってモノ考えれば、世の中の争いことはなくなるはずなんだよ。それはみんなに分かって欲しいね。

何しろ俺みたいなちょっとした恨みを十年二十年単位で復讐しようなんているんだからね、充分想像力を働かせて欲しいな。結局想像力が働かないと目の前の現実に百%占領されちまうんだよ。現実を変革するのは一重に想像力の力にかかってるってワケさ。

■1993年8月9日・新宿滝沢にて