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雑誌周辺文化研究互助

故・青山正明氏が『宝島30』で語ったロリコンにまつわるエトセトラ

日本を代表するサブカル雑誌『宝島』が1990年代前半に「単なるヌード雑誌」になってしまった頃、かつての『別冊宝島』編集部が中心になって『宝島30』というサブカル誌を立ち上げた。根本敬の『人生解毒波止場』やオウム事件ルポルタージュなど尖った内容が多かったが、経営上の問題で1996年にあえなく廃刊。休刊後、大塚英志は「執筆者同士が互いにオウムをめぐっての発言で糾弾しあい言論装置としては自壊していった感のあるおたく系論断誌」と片付けている。ちなみに『宝島30』のオウム記事は別冊宝島229『オウムという悪夢』にまとめられているので、オウムネタに興味がある人はそちらを参照されたい。

今回取り上げるのは1994年11月号の特集「ロリータの時代」。『危ない1号』を世に送り出すことになる青山正明主宰の伝説的な編集プロダクション「東京公司」の名前が企画・編集協力としてクレジットされている。この号では「芸能」「映画」「音楽」「コミック」「パソゲー」など多ジャンルにおけるロリータネタが横断的に紹介されているのだが、青山氏は「ロリコン史」「身近なロリコンの変態エピソード」「ロリコンが誕生した社会的な背景」などを詳細に解説している。

以下に、青山正明×志水一夫×斉田石也の鼎談記事と青山氏の記事2本を再録した。

青山正明

伝説のキャンパスマガジン『突然変異』で慶応大学法学部在学中から頭角を現し、親父向けエロ雑誌『ヘイ!バディー』をロリコン路線に変えさせ、『危ない薬』でドラッグ文化を広め、世紀末に『危ない1号』で悪趣味/鬼畜をトレンドにした、80~90年代の日本に最も悪影響を与えた天才編集者。チンピラ系シンクタンク「東京公司」代表。2001年6月17日に首つり自殺。享年40。

青山正明×志水一夫×斉田石也・鼎談「受験と女権とロリータ文化」

ロリータ・メディアに創成期から関わった三氏が語る、現在のブームの背景とは!? 高度大衆社会が産んだ、あまりにキッチュなロリータ文化!

構成・武市太

 

──フレンチロリータという言葉がありますが、今日はいわゆるジャパニーズロリータについて、お話をうかがいたいと思います。日本のロリータブームの特殊性、それが生まれてブームになった背景、その動向について、できるかぎり大きな視点から捉えてみたいのですが、まず、日本に初めてロリータなるものが誕生した頃の話をしていただけますか?

 

斉田:1966年、『12歳の神話』という写真集が最初でしたね。

 

──それは商業的、ビジュアル的な展開の最初と考えていいわけですか。文学の世界では、たとえば澁澤龍彦などが、もっと早い段階でロリータを語ってますが。

 

斉田:そこまでたどっちゃうと、ものすごいことになってくるんですよ。たとえば、読み方によっては川端康成の『伊豆の踊子』とか『雪国』もその範疇に含まれてくる。

 

青山:川端には、中編で『眠れる美女』というモロのがありますものね。

 

志水:『伊豆の踊子』はたしか14歳ですよ。『セーラームーン』と同い年(笑)。

 

斉田:そこでいきなり、『伊豆の踊子』が『セーラームーン』につながるか(笑)。

 

青山:いいなぁ、今のひと言効きましたよ(笑)。厳密に言えば、絵画の世界、文学の世界ではかなり前からありますね。たとえば、富士見ロマン文庫から出た『ペピの体験』。71年、『えろちか』というエロ専門のアングラ雑誌に何回か連載されて、後に富士見ロマン文庫に入ったから、原作自体はそうとう前です。まあ、そんな絵画や文学作品を個人の趣味として楽しむような素地はあったにせよ、ひとつの世界としては確立されてなかったわけですね。それがある種ジャンル的な兆しとして出てきたのが『12歳の神話』。

 

斉田:そうです。でも、ロリコンを意識してつくられたものではなかったですよね

 

志水:あのときは、いちおう純粋な写真家の。

 

青山:芸術でした(笑)。で、それがけっこう続いて、オランダとかデンマークとか海外で70年代初頭あたりにポルノが解禁されて、チャイルドポルノというのが出てくる。それがダッーと日本に流れ込んだのが『モペット』とか……。

 

斉田:『ニンフ・ラバー』とかね。少女と男がほんとに絡んでるヤツが77、8年ぐらいからちょこちょこ日本に入るようになった。

 

志水:『リトル・プリテンダー』が大きいでしょう。ワレメがちゃんと写ってるというんで、みんな探し回った(笑)。そしたらすぐ増刷された(笑)。代用品だったんですよね。今のようにヘアヌードが解禁されてなかったから

 

青山:毛はダメだけど、ワレメならいいだろうって。そういう理屈だったですよね。

 

斉田:あの当時はそうでした。野坂昭如の裁判だとか、関根恵子のヌードだとか、ともかくヘア、ヘアだったから。ヘアが生えてなければ性器じゃない、と。まして子どもの性器というのはまだ性器になってない、ただの排泄器官だっていう

 

志水:あと、年齢が低ければ実際には大人の体でもかまわなかった。でも、そうなると本当の意味でのロリコンと違うんですけどね。

 

斉田:そういうニーズを一身に集めたのが完全に大人の体だった『少女M』。

 

青山:『少女M』なんか見て、潜在的な欲求を再確認して、ああよかったんだというエキスキューズになったという安堵感があって……。

 

斉田:うん、だから、オレだけじゃないぞっていう。

 

志水:みんなやってんだ、よかった♡みたいな(笑)。

 

青山:それからもどんどん本が出てきて、新たにロリコンに目覚めちゃったという人もかなり多かったでしょう。少女を性の対象にする欲望というか、メンタリティの芽生えというか、急速にすそ野が広がったという感じですね。

 

斉田当時はロリコンであるということがファッションみたいな、流行の先端みたいに考えてる大学生なんかがいましたものね

 

志水:浅草でSF大会をやったら、近所のビ二本屋からロリコン系のヤツだけがゴソッと消えたって話がある(笑)。SF大会に来たヤツがみんな帰りに買ってったって。彼らはシャレで何でもやるからねぇ*1

 

青山:僕もその話聞いたんですよね。SF大会で盛り上がったんじゃないかな、一気に。

 

先祖返りとしてのロリコン

──ロリータヌードが代替品として出回ったにせよ、たとえば西洋との違いを考えると、西洋には性に対してキリスト教的倫理観がありますし、子どもの扱い方にしてももっと厳格ですよね。なぜ、日本は成熟した女性じゃなくてロリータになるのか……。日本は特殊なんですかね。

 

志水:仏教で普通の男女の性欲的な関係を禁じてしまったことと関係があるのかもしれませんね。日本では昔から変態はいいことになっていて、歌舞伎や宝塚はかまわないけども、そのくせ男女の普通の関係は規制されるというね。戦場に女は連れていかないというのが前提ですから伝統的に同性愛はあるし、あと少女愛もそれこそ『源氏物語』の時代からの伝統でしょ。同性愛は日本では大正ぐらいまではタブーじゃなかったんでしょう。大正デモクラシーあたりで急にダメになった。どうしてなのか分からないんですけどね。

 

青山:『性の世界記録』という本を読むと、江戸時代に吉原で赤ん坊としか呼べないようなのがフェラチオ専門で飼われているんです。当時は結婚だって12、3歳で嫁入りしたりとか。今の小6とか中学生ぐらいが結婚してもうやっちゃうというのが、当たり前と言えば当たり前の話なんですね。

 

──そうした日本の特殊な土壌を考えると、海外からロリータの写真集が来て、ショックを受けて、先祖帰りしたように思えますね。

 

青山:そうですね。それまでずーっと当たり前だったのが抑圧されて、アレが来たおかげで、今度は変態とかおかしな奴っていうイメージが付いてまた浮上してくるんですね。

 

──当時のロリータが百花繚乱状態だったのは、どれくらいの間ですか。

 

青山『ヘイ!バディー』が出てた80年代の頭から半ばぐらいまで。80年前後はタウン情報誌の『ぴあ』が人気を集めて、ようするに男も女も遊ぼうよということで、遊び場がどんどんできて、実際、いっしょに遊んだものの、どうもキツイと。そこで幻想が破れて少女に走る軍団が大量にいたんですよ

 

斉田:その頃って『ヘイ!バディー』なんかの語調に、たんに写真集集めて本読んでるだけじゃダメだぞっていうような感じがあったでしょう。どんどん街に出て写真を撮れ、と。で、チャンスがあれば物陰に連れ込め、みたいな(笑)。“少女いたずら写真”なんていうページがあって、間違いなく部屋に連れ込んで脱がしてるというような……。

 

志水:「ほとんど犯罪写真」でしたっけ。

 

斉田:犯罪以外の何物でもない(笑)。ただ、読者がすぐ作る側になれた時代でしたね。今の投稿雑誌のハシリもあのへんじゃないかな。『ヘイ!バディー』あたりから読者投稿のページがバーッと増えてきて、ある日突然、「僕こんな少女の写真撮りました」とかいって、ダンボール箱ひとつ、ドンッと持ってきたら、そいつがそのまま先生になっちゃうとか。僕自身も『CANDY』に投稿したのがきっかけだったな。

 

青山:僕も大学のミニコミヨーロッパのチャイルド・ポルノの入手法を書いてて、『ヘイ!バディー』の編集長(高桑常寿)に呼ばれたんですよ(笑)。ロリータ本作るようになっても付き合ったのはプロの物書き、絵描きじゃなくて、当時の斉田さんのようなサラリーマンやってた人とか、そういう人しかいなかったですよね。

 

志水:アニメがブームになったときも同じことがあったんですよ。アニメ知ってる人っていうと、ファンしかいないんだから。で、予算も少ないっていう問題もあって、ムック一冊、編集者がバックに付いて素人に作らせたという例があったからね。自主制作で突然、映画一本作っちゃってそのままプロになったっていう例すらありますよ。

 

斉田ロリコン誌という見方をすると、マンガの『レモンピープル』と写真の『ヘイ!バディー』が横並び一線みたいに見られてましたよねあと『漫画ブリッコ』とか、大洋図書の『アリス・クラブ』とかが続いて

 

志水:『漫画ブリッコ』って、それまでそうじゃなかったのに、突然、ロリータに移行したんですよね。ロリコン系マンガ家の作家特集を次々とやってた。

中森明夫の「おたくの研究」が掲載された『漫画ブリッコ』1983年6月号)

 

青山:『ヘイ!バディー』もそうですもんね。それまで単なるエロ本だったのが、ロリータにしてみようということでパッと。

 

志水:70年代末の『少女アリス』が重要な存在なんじゃないですか。自販機本。その中で吾妻ひでおさんがロリータマンガを描いてた。これが大きかった。あの頃の自販機本って、ほんといろんな人が描いてて面白かったんですよね。

 

青山:自販機本はロリータだけじゃなくて、スカトロにしてもドラッグにしてもオカルトにしても無法地帯でしたから、アレはほんとにいちばん面白いメディアでしたね。

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『少女アリス』はアリス出版が1979年6月頃から1981年6月頃まで刊行していた自動販売機雑誌。通巻25号で終刊。『ヘイ!バディー』(白夜書房)以前に刊行されていた美少女系雑誌だが、登場するモデルは全て18才以上であり、本当の少女ヌードは取り扱っていない所謂「疑似ロリータ誌」であった。

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しかしながら「当時、娘の制服を借りて来たのか、と張り倒したくなるようなババアがセーラー服姿でニカッと笑っているのが普通でさえあった自販機本業界にあって、おそらく本物の十代の少女が登場する数少ない総合グラフ誌だった」という(斉田石也談)。ちなみに2代目編集長の川本耕次の依頼で吾妻ひでおが同誌に連載した「純文学シリーズ」の初出誌としても有名。連載は川本の退職とともに終了したが、翌年に『陽射し』として単行本化され、当時の「吾妻ブーム」を象徴する記念碑的一冊となった。

 

マンガ同人誌とロリコンの関係

青山:マンガ同人誌の連中がどんどんロリコン風に描くようになって、それが広がっていく様子はどうだったんですか。

 

斉田最初はパロディでしたよね。『アルプスの少女ハイジ』とか、『キャンディキャンディ』とか、『うる星やつら』とか。

 

志水:その少し前に、アニメでバストがあるヒロインが初めて登場したんですよ。現在は推理作家として活躍してる辻真先さんがメインでシナリオを書いてた『魔法のマコちゃん』。それまで胸はなかったんです(笑)。そのあと同じスタッフが『キューティハニー』を作って、『魔女っ子メグちゃん』にいくんです。同じメイン・スタッフで。

でね、そのしばらく後に吾妻ひでおさんのところに出入りしてた人たちが、彼らは漫画画廊で知り合ったそうですが、吾妻さんをゲストに招いて『シベール』という同人誌を作った。吾妻さんの作品というのは、少年誌の絵柄で青年誌に描いた作品の先駆だったし、しかもハッキリとセックスものでしたからね。

(日本初のロリコン漫画同人誌『シベール』創刊号。扉イラストは沖由佳雄。1979年4月8日発行)


(『シベール』創刊号の吾妻ひでお赤ずきん・いん・わんだあらんど』より)

で、ドーンとブームになったところで、突然、廃刊しちゃうんですね。それでみんな欲求不満になって、つぎつぎに同人誌を出しはじめるんですよ。もう、盛り上がったところで消滅しちゃったもんだから、どんなモノでも売れたの、あの時期は。だって、僕の絵の載ってたヤツが売れたんだから(笑)。

あと『ガンダム』の存在が大きい。『ガンダム』は素晴らしいですよ。女性キャラクターの体つきがぜんぶ丁寧に描き分けてあって、顔を隠しても同じ服着てても誰だか分かるの。で、同人誌で『ガンダム』のヌード起こしをやったのが、一般化するんですよね



それまでは密かにコピーでつくって、回したりはしてたんですが、同人誌でハッキリやったのは、現在プロで活躍してるみやすのんきさんがやってた『のんき』という同人誌の『ガンダム』の女性キャラ・ヌード特集が最初でしょう。それとその姉妹誌みたいな本で、ようするにアニメ版のビニ本だった『ヴィーナス』があったんです。この二つは印刷屋がビビッて回収したことがありました。

それから、今の『コミックボックス』、当時の『ふゅーじょんぷろだくと』の美少女特集で「ロリコン同人誌とは何か」って記事がありました。81年に私が書いたんですけども(笑)、そこで『シベール』は内容を紹介したんですが、ほかのものは表紙しか載せなかったのね。そうしたら、一番いい『シベール』だけ中身が載って、ほかのヤツは載ってないから、みんなが幻想を持っちゃって(笑)。それで、次のコミケット行くと、みんなそれをチェックリスト代わりにして買ってるわけですよ(笑)。あの頃なんか、アニメでもヌードシーンが大流行しましたしね。ラムちゃんの影響もあるし、アニメに出たヌードシーンだけをビデオ撮りして同人誌出せるぐらいあったんですから(笑)。


ただ、アニメでのヌードシーンのはしりは、『ハニー』を別とすれば、『ヤマト』のワープシーンの森ユキのやつ。それからロリコンという言葉は、今をときめく宮崎駿さんの『ルパン三世 カリオストロの城』で使われてたのと、それを受ける形での『アニメック』の美少女特集がきっかけでしょう。その特集の担当者だったのが、今『ニュータイプ』編集長のIさん。この頃ロリコンに関係した人はみんな出世してる(笑)。

(本格的なブームの先駆けとなった1981年3月発売『アニメック』17号での25ページにもわたる大特集「“ろ”はロリータの“ろ”」。『カリオストロの城』のヒロイン・クラリスほか、名作アニメの少女評、ライターの安座上学によるSFとロリコンを関連づけた評論ルイス・キャロル研究家の高橋康也インタビュー、そして吾妻ひでお村祖俊一中島史雄らへのインタビュー、『シベール』『クラリスマガジン』など美少女同人誌の紹介など掲載。表紙に使われた『カリオストロの城』のシーンが「妬かない、妬かない。ロリコン伯爵。や〜けどすっぞ〜!」というルパンの台詞の直後であることは非常に象徴的であり示唆的)

 

理想の女性象としてのロリータ

青山:アニメ、マンガ系のほうも写真誌とか実践派と同じなんですね。もともと根があったものが、あるきっかけがあって、じゃあ、オレもオレも、と。そのなかから今度は描き手に回る奴も出てくるし、グルグル膨らんでいく。僕はそういうブームと並行して、相対的に男性の地位がだんだん下がってきたことの影響があると思うんです。女性が強くなれば、それだけウブな部分が欠落していくのは当たり前の話ですからね。

 

志水ちょうどロリコンブームの頃に逆にお姉さんブームというのもあったじゃないですか。ようするにロリコンのほうは騙せそうな女の子、で、お姉様のほうは騙されてやってくれそうな女性だ、と。根は同じだという説があるんですよね

 

斉田:ピーターパン・シンドロームなんて言葉も流行りましたね。

 

青山:それに、受験体制と性産業の発達も連動してると思うんですよ。たとえば、昔の男だったら16ぐらいで赤線に行くとかするんだけど、今は大学に入るまでお預けになるのが暗黙の了解ですよね。で、抑圧される。

抑圧されれば妄想が膨らむのは当然で、そこに乗じてエロメディアというのが発達して、裏本も出てきたし、どんどん豊かなオナニーをするようになっていくわけですね。それもビデオだ、雑誌だと、妄想がどんどん膨らんでいって、ほんとだったらもう本番をやってる年齢になってもオナニーで済ましちゃう。否が応にも女性に対する妄想がガンガン膨らんでいって、大学に入ってようやく解禁ですよね。

ところが、実際、付き合うと面倒臭い、何々を奢らなければいけない、どこどこに連れて行かなければいけない、セックスしてみると重いし臭いし(笑)。イメージしていたピンクの乳首なんか、なかなか出会えない。そこらへんのギャップってすごくデカイでしょ

 

志水:フィフティ・フィフティの関係を女性は求めるけど、男は結局、それじゃやってられないというのがありますものね、実際。

 

青山:『ヘイ!バディー』が潰れた頃に、『プレイボーイ』の座談会で高杉弾さんが言ってたのが、ようするに高校3年生まではチンチンをビンビンに立ててオナニーして、元気で、精力絶倫だったのが、大学に入って女とやったところで、もういくらやっても面白くないみたいな感じで立たなくなっちゃったと、そういうのがずいぶんいたっていうんですね

 

志水:それはけっこう象徴的な話だなあ。

 

青山:もう大学生には求められなくなっちゃって対象年齢を下げるか、お姉さんとか母親とか上に行く。妄想の洪水の中で豊かなオナニーライフを送ったというね。そこらへんがブームのベースになってるんじゃないかという気がしますね。アソコって綺麗で美しくて、と思ってたのが、実際にはすき焼きの残り肉みたいなのを見せられて。なんだ、これはって(笑)。そうすると疑似世界に走りますよね。まずマンガとか写真とか何かに。そこで求められるのはロリータ的なウブな理想の女性ですよ。綺麗で、淡い色の乳首で肌の張りもあってという。

 

志水:いわゆるロリコン同人誌から出たマンガ家さんのなかにも、自分で使うために書いてた人がけっこういるんだ(笑)。

 

斉田:それは、たとえば、小説の世界でも、私にしてもそうだったし(笑)、作家の○○や××なんか、今でもそうですよね。描きながらヌいて、著者校正しながらまたヌいて、で、上がってきたのを読みながらまたヌいちゃう(笑)。

 

大人なのにロリータ

──ロリータの世界では、細分化とセッションがいつも起こっているような印象があるんですが、例えばロリータで巨乳とか、そんなものが現実に存在するのか疑問なんだけど、そこでは何の問題もないわけでしょう。

 

青山:マンガ、アニメの世界で純情な成人女性を描くと、いかにも作り物、嘘だなって誰が見ても分かるような設定にしかならないんですよ。ある程度のリアリティを持たせるには、年齢を下げるしかない。

 

斉田:小説を書く立場から言えば、もうシチュエーションというのは退行させちゃわないと。今の最先端で実際に生きてる小、中学生を頭に描いてやっていくとコケますね。それほどセックスの知識のない純な中学生に、たとえば塾の先生、進学塾とか、そういう現実のものを用意するんです。ただ、やってることはもう昔から出てくる子どもと同じです。

 

志水:マンガだと、宇宙人だったり、アンドロイドだったりとか。可愛がってる猫が女の子に化けちゃったみたいなさ、そういうパターンもありますよね。ようするにペットですよ。

 

青山:昔風にしてみたり、猫を持ってきたり、宇宙から来たり、神様だったり(笑)。そうやって考えるしかないんですね。結局、ウブでふくよかな大人のボディを持った、それこそ箱庭的な完成品が求められるんですよ

 

斉田:そういう意味では、アニメとかコミックの世界のほうが、そういうものをパッと作って持ってこれるよね。

 

志水:その前哨戦というか、前触れとして、アグネス・ラムがいたという話があるでしょう。童顔でボディが発達していて。『うる星やつら』のラムちゃんに直接つながってる。

 

コレクション化するリビドー

斉田:表メディアは分かりませんけど、現在のいわゆるエロ本系の読者で言えば、昔からのロリコンが一方にいて、もう一方で昔は女子大生あたりに夢中だったのが、とてもじゃないけど感情移入できなくなって高校生にしたら、今度はブルセラが摘発されて冗談じゃねぇぞというんで、とうとう中学生に流れ込んだ。

だから今、ワッと膨れ上がった層はブルセラから流れ込んできた連中なんです。ハッキリ言うと、今の業界を賑わしてるのは、ロリコンというより気弱なスケベなんじゃないですか。後者のほうが圧倒的に多いと思います。朝日新聞の記者の事件とか吉本興業の芸人が干された事件とかが大々的に報道されると、下手に手を出しちゃ怖いということになるし、結局、メディアの世界に逃げ込んでくるしかないわけですよ。

 

青山:専門誌の『アリス・クラブ』が8万部出てるとかそういう世界ですもんね。

 

斉田:で、そうなってからの最も特徴的な変化というのが、志向がカタログ化したこと。読者の投稿を見ると、どこどこの本屋でプレミアムの相場が3万円ぐらいだった本を2万円で手に入れて、「わぁーい、得したぞ」とか。故・清岡純子が撮った写真集『プチフェアリー』を45万円出して買った、とか。単なるコレクションなんですよね。少女じゃなきゃ勃起しないとか、毛が生えたら気持ち悪くて嫌だとか、そういうごく一部のマニアはより深く狭い世界に潜行してるのかもしれないけど、『アリス・クラブ』の読者なんかにはあんまりいないような感じがします。それと、メディア的だなと感じるのは、僕のところに来る投稿で、「よくまあこんな一瞬のモノを」というようなのがあるんです。何月何日のニュースで、急に暑くなったから、川で子どもがパンツ一枚で遊んでたとか、どこかの学校で事件があって、画面の隅にブルマの女の子がウロチョロしてるとか。

 

志水:四六時中、ビデオを回してるんだ。

 

斉田:そうなんですよ。そういうものを常に求めてる。じゃあ、いったい何のために求めてるのかというと、やっぱ、採用されて満足を得るのかなという

 

青山:リビドーが射精よりもコレクションに向いちゃったりしてるというのがあるんですねぇ。オーガズムよりもいいものは何かという方向で、まあコンピュータもあるだろうし、いろいろあるんだろうけれども……。

 

ジャパニーズ・ロリータが世界を席巻する!

青山:今後、日本のロリータは、海外に進出すると思いますよ。というのは、日本の風俗はおカネを払えば、同じサービスをしてくれますよね。ところが、この前、ハワイ取材に行ってさんざん聞かされたんだけど、アメリカは違うんですよ。買ってからが交渉で、あんたとはやりたくないからダメと言われたり、そこからさらにおカネを積んだり、ようするに普通の男と女の関係に持ち込まれちゃうらしいんですね。風俗ですら男の従性が求められるという状況だから、オタクみたいのいるの? って聞いたら、もういるいるって(笑)。流入する下地は充分にあるんです。

 

斉田:実際ブームの頃にね、都内の某ロリコーンショップに書籍の取次ぎの海外事業部がまとめ買いに来てたって。『CANDY』とか『アリス』とか書店コードのない本を。

 

──アメリカなんかでもちょっとずつ受けてるみたいですね。

 

青山:『うる星やつら』と『ああっ女神さまっ』がもう出てるという話でしたからね。

 

志水:『オオ、マイ、ゴッデス』というタイトルでね(笑)。

 

斉田:そういう表メディアもそうだけど、ちょうど『プチトマト』がおかしくなったのもアメリカのポルノショップが日本のものをどんどん輸入して、問題視されたかららしいんですね。聞いて笑うに笑えなかったのは、日本人の少女が出てるぶんには問題がなかったらしいんです。でも、白人の三人娘の本がいっしょに向こうに流れて、これはとんでもねえっていうんで摘発された、と。で、日本はいったい何をやってるんだ、というようなことになって、慌てて『プチトマト』が摘発されたらしい。

 

青山:僕がロリータものやってたときも、オランダから何度も手紙が来ましたよ。日本のロリータ写真を送ってくれ、高く買うからって。

 

斉田アメリカなんかでは絶対あり得ないはずのものだから、絡んでようが絡んでなかろ,うが、ただ裸で突っ立ってるだけで、非常に貴重なものだというのがあるわけですよね。

 

男はつらいよ

青山:幻想の再生産は今後も続くだろうけど、やっぱり男は現実世界で少女なるものを求めるのかな。それとも、法的に不可能なんで、国際結婚が流行したりするんですかね。多いんですよ、ロリータじゃないけど、なるべく純情そうなアジアの女性と結婚する男って。これはロリータ現象と直接には結びつかないけど、同じような流れだと思いますよ。純情って、メディアの世界と第三世界だけで生きてるって感じがしますね。つまり、男のマインドのなかでね。

 

斉田:ビジュアルの世界でも、実際問題、そんな奴はいねえよというぐらい純情に作ってあげないと、読者には受けないですよ。

 

志水:SM小説でも、言葉遣いが『東京物語』してる(笑)。山のあなたの空遠く、純情住むと人の言う……(笑)。

 

斉田:そうなってくるとやっぱり、ロリータメディアというのも、今のまんまでずーっともう行くのかな。叶わぬ夢みたいなところで。

 

志水:それはそうでしょうが、ロリコンマンガは飽きるんです(笑)。体験のない人がほとんどで、他人のマンガの真似してるだけなんですよ。みんな同じだから。

 

青山:メディアの状態で飽きちゃうというのは大きい問題ですよ。ロリータだけじゃなくて、スカトロでも、妊婦ものでもなんでも、メディアでゲップっていう

 

斉田:願望そのものは、もうどんどん膨らんでるし……。

 

青山:どんどん行っちゃってるから、逆に、並の女見てもお前ぐらいじゃダメだっていうね。僕なんかが模索してるのは、女以外のものでチンコ立たせてくれるものはなんかないかなってこと。なかなかないけど(笑)。まあ、男と女の対立というのは、ロリータとは離れても、これから際限なく拡大するでしょう。女は圧倒的に現実感覚で、どこかに行くとか、セックスばんばんしましょうとか。一見進んでるみたいだけど、それは昔の男がやってたことなわけで。

 

──女性にスイッチを合わせて、遊びに付き合うって男はバカっぽいですもんね(笑)。

 

志水:それは言えてるんだよなあ。

 

青山女が三高の男を望むというのもおかしいんです。だってそういう男は受験制度の真ん中を突き進んだ人だから、ある程度擬似世界に浸ってるはずなんです。むしろ女は土方とか、専門学校生とかを選ぶべきなんですよ土方だけど、顔は草刈正雄っていう(笑)

 

斉田:そんな奴はいねぇって(笑)。

 

青山:特に性欲の強い一流企業のOLには、土方とか専門学校生との組み合わせがしっくりくると思いますよ。やっぱり。あと、アダムとイブじゃないけど、アレって隠してるから楽しいんで、ヌーディスト村かなんかに参加しちゃったら、ぜんぶインポになったっていう話がアメリカであるでしょう。年中、チンチン、マンコ見てるわけだから。僕も写真を含めて何千のマンコを見たことか。もう飽きちゃいますよ。あんなもん。そこまで考えると、性の解放とかっていうのは、よくないんじゃないかな。裏ビデオとか裏本だって簡単に買えちゃうし、カネ払えば風俗に可愛い子がいてできるし。そんなのばっかりやりまくっちゃってたら、もう……思想を低めるだけですよね。

 

──まあ、女の人はいいのかもしれないけど、ほんと“男はつらいよ”ですね(笑)。

 

あおやま・まさあき

60年神奈川県生まれ。慶応大学法学部在学中からロリータ業界の仕掛人として暗躍。チンピラ系シンクタンク「東京公司」代表。著書に『危ない薬』(データハウス)。

 

さいだ・いしや

53年東京都生まれ。フリー編集者、ライター。ロリコン専門誌でデビュー。以来この道一筋。E・S・P代表。

 

しみず・かずお

54年東京都生まれ。作家、科学解説家、SF研究家。元アニメ雑誌編集者で、漫画やアニメへの造詣が深く、ロリコン同人誌について論じた最初の人物。

 

 (引用者注:青山はエロ漫画で抜けなかったそうだ。しかしながらデビュー後に一度だけ『シベール』の中心人物である蛭児神建と会っている

 

ロリータをめぐる冒険

芸術か、犯罪か。幻想か、妄想か──。

ロリータをめぐる冒険

評価の定まらないロリータへの旅は、つねにイバラ道だ。

日本男子の眠れるロリコン心に初めて揺さぶりをかけたのは、作者不詳の海外ノベル『ペピの体験』(富士見書店)と、アメリカから入荷された写真集『モペット』シリーズである。どちらも、市場に出回りはじめたのは77年の夏のことだ。『ペピの体験』は、少女をメインキャラに据えた究極のチャイルド・ポルノ小説。もう一方の『モペット』は、米ヌーディスト村にカメラを持ち込んでの、いたって健全な(?)単体少女ヌード写真集。とはいえ、幼い乳房とへアなしのワレメのオンパレードは、ポルノ後進国日本にあって、それなりのセンセーションを呼び、週刊誌などに取り上げられもした。

さて、『モペット』ショックからおよそ1年半。79年の1月にロリコン・ブームの実質的な火付け役と言われる『リトル・プリテンダー』がミリオン出版から発売される。海外ものではなく、日本人少女(5人)の全裸を日本人カメラマンが撮影したという点で、この写真集が世の男性、そしてエロ・メディアにもたらした影響は大きかった。このムックがきっかけとなって、その後、続々とロリータ・ヌード写真集が出版されることとなる。

白人少女ソフィーをフィーチャーした『ヨーロッパの小さな妖精たち』(79年)、超絶美形巨乳少女・花咲まゆ(13歳)の豪華箱入り本『潮風の少女』(82年)、少女の純朴な笑顔が印象的な『さとみ10歳の神話』(83年)、後に英知(英知出版)3部作と称される『心のいろ』(84年)、『君はキラリ』(84年)、『不思議の国の少女 早見裕香』(84年)、通巻42号を数え、質量ともにトップを誇った清岡純子写真集『プチトマト』シリーズ、などなど。80年代だけで、何と100タイトルを優に超えるロリータ・ヌード写真集が出たというから恐れ入る

 

『ヘイ!バディー』創刊

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1980年創刊。後にロリコン雑誌の先駆的存在となる同誌だが、創刊当初は至って凡庸な中年向けエロ本の一つだった。81年末から82年春にかけて青山正明氏の参入を経て徐々にロリータ記事が増えていき、1982年6月号からは完全にロリコン雑誌に移行する。とくに読者投稿コーナーでは少女の盗撮写真や連れ込み写真など犯罪の匂いがする危険な写真も平然と掲載する姿勢が話題を呼び、3年間で7万2000枚もの少女写真が集まった。しかし、85年に別冊『ロリコンランド8』が発禁となり、本誌も休刊を決断する。「ワレメが見えないロリコン雑誌はもはやロリコン雑誌とは呼べません」「以後ロリコン誌とは呼べなくなるHBを終刊することにしました」とは終刊号での編集長の談

ジャンルの区別なく、人気のあるテーマは定期刊行物、つまりは雑誌となって、ファンを拡大・再生産していくのが消費社会の常。ロリコンもその例に漏れず、80年に創刊された月刊『ヘイ!バディー』(白夜書房)が、ブーム過熱に多大な役割を果たした

創刊当初、ごく当たり前のアイドル系エロ雑誌だった『ヘイ!バディー』が明確にロリコン色を打ち出したのは82年の春。私事恐縮だが、実を言うとこの雑誌、僕が初めて原稿を書いた商業誌である。

74年、中学2年の夏に偶然、デンマーク製のチャイルド・ポルノ誌『チルドレン・ラヴ』を手に入れた僕は、以後、高校・大学時代を通してよからぬコレクションに血道を上げる。その成果発表する場が、ようやく与えられたというわけだ。

かくして僕は、80年代初頭から半ばにかけて興隆を極めた“第1次ロリータ・ブーム”の作り手のひとりとなる。いやはや……

思い返してみるに、『ヘイ!バディー』の誌面は毎号、とことん過激な企画で埋め尽くされていた。

少女のヌード・グラビアは当然として、読者が投稿してくる水着レオタード、パンチラ、犯罪すれすれの全裸スチール、最新ロリー夕写真集の紹介、素人撮りを含めたビデオの通販情報、さらには極めつけ、「内外のロリータ裏ビデオのレビュー」なんていう連載記事もあった

全盛期には7~8万部を売り上げていた『ヘイ!バディー』。なぜ、こんなマニアックな専門誌がそこまで部数を伸ばしえたのだろうか?

もちろん、正解は、「熟れる寸前、少女の肉体はひたすら純粋に美しい」から。それともうひとつ、よく言われることではあるが、「男の理想とする女性像」「現実の女性」とのズレも、ロリコン男の形成に深く関わっていると思われる。

 

時代がロリコンを産んだ

栄養状態の向上にともない、早性の精通年齢は徐々に低下、ひと昔前に比べると肉体的に大人になる時期は早い。にもかかわらず、学歴偏重の歪みか、「大学に入学するまで、生身の女性と交わるのは禁物」というおかしな常識が流布。勢い、精通してから大学に入るまでの7~8年間、相当数に上る男性がマスターベーションのみによるオーガズム体験を繰り返す。あまつさえ、氾濫するセックス・メディアによって疑似セックスの質は高まるばかり。こうした視覚重視の長期にわたるマスターベーションが男性、とりわけ少年の性的メンタリティに深刻な作用を及ぼすことは想像に難くない。執拗なマスターベーションは少年が抱く「女性のイメージ」を現実から遊離させ、そのイメージは理想(美化)と逸脱(異常性欲)の狭間を揺れながら、いびつな形で肥大化し固定化していく。ところがいざ現実の女性に接してみると、彼女たちは決して従順ではないし、純粋でもないし、ひどく淫乱というわけでもない。疑似セックスによって培われた「女性のイメージ」は、「生身の女性」の前に脆くも崩れ去る。

それでもなおイメージにこだわる、というより疑似セックスから抜け出せずにいる男性は、自らのイメージに合致する装置なり対象なりを追い求める。前戯至上主義のイメクラしかり、即物的射精装置のピンサロしかり、年長女性にすべてお任せのマザコン男しかり、そして、心身両面にわたって優位に立たんとするロリコン野郎しかり、である。

男の性のヴァーチャル化とは別に、セックス産業におけるロリータ・メディアの盛り上がりは、「ヘアがダメなら、ワレメがあるさ」という商売上の安易な戦略と解することもできる。ただし、同じ少女を扱った性産業でも、70年代のヨーロッパを賑わせたチャイルド・ポルノと、日本のロリコン・メディアとはかなりの隔たりがある。欧州のチャイルド・ポルノは、少女のワレメを広げ、そこにペニスをぶち込む紛うかたなきポルノ。片や、日本のロリコン・メディアは、体験談や小説といった文章ものを除けば、単に小さな乳房やワレメの鑑賞にとどまるロリータ・ヌード。では、日本人はチャイルド・ポルノが嫌いなのか。いや、違う。

その証拠に『ヘイ!バディー』には、読者が女子中高生を部屋に引っ張り込んで撮影した「犯罪の匂いムンムンの全裸写真」や、ヨーロッパ・東南アジア・日本で製作された「少女との本番ビデオ」に関する写真付き記事ほぼ毎月掲載され、好評を博していたのである。しかし、そうした読者本位の過激な誌面を、お上が黙認し続けるはずがない。そうこうするうちに、本誌に次いで、投稿写真を集めた別冊『少女アングル』が当局から警告を食らい、85年11月号をもって廃刊となる。『ヘイ!バディー』が廃刊に追い込まれた理由は、当局絡みのトラブルだけではなかった。

84年12月に創刊された後発のロリコン専門誌『ロリコンHOUSE』(三和出版)に読者を奪われ、部数に翳りが見えはじめていたのだ。投稿に重きを置いたアングラ色濃厚な『ヘイ!バディー』に対し、『ロリコンHOUSE』は山添みづき、萩尾ゆかりなど、作り手が率先して次から次へとロリータ・アイドルを輩出。また、コミックスやアニメにも紙幅を割き、「美少女&二次コン」という今日にも通ずる新境地を開拓してみせた

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 (監修の川本耕次は元『Peke』『少女アリス』編集者。なお『ロリコンHOUSE』は89年の宮崎事件の余波を受けて『ロリくらぶ』に誌名を変更している)

 

撤退する少女のワレメ

80年代末、諸々のアブノーマル・エロ・メディアが復興を遂げるなか、ことロリータものに関しては、いまだにハード路線(ワレメ露出)はご法度のようだ。『ヘイ!バディー』が出ていた当時は、ビニ本ルートでも『みるく』や『CANDY』など、ワレメ盛り沢山の不定期刊行物が流通していた。しかし、いくつかの例外を除けば、その後のビニ本系のロリコン誌は、表メディアと軌を一にして、ソフト路線(ワレメ消し)に転向していく

グラビアから映像媒体に目を転じてみると、日本初のロリータ・ビデオは、82年8月に発売された『あゆみ11歳 小さな誘惑』。伊豆の別荘地で少女と出会った大学生の青年が、彼女にほのかな思いを寄せるという淡いラヴ・ストーリー仕立ての作品である。大学生ツトムの役を若かりし青山正明(当時大学4年生)が務めたこととはまったく関係なしに(トホホホホ……)、定価3万円の本作はあっという間に4千本を売り尽くした

『小さな誘惑』のヒットを潮に、写真集よろしく、あまたのロリータ・ビデオが矢継ぎ早に制作される。数量が増せば、おのずと内容もバラエティに富んでくる。12歳の少女の乳首を男が舌先でつつく衝撃作『小さな妖精』(84年)、14歳のEカップ少女を配した『尼寺の夢少女』(85年)。

しかし、80年代の半ば頃より方々からワレメ規制の声が上がり、88年夏になると、ビデ倫が「ロリータものを審査対象外にする」旨を通達。リリース数は急激に減少した。その前年には、『プチトマト42』が警視庁から摘発を受けており、これらふたつの事件をもって、少女のワレメは表メディアからの完全撤退を余儀なくされる

 

裏ビデオの中のロリータ

表があれば、裏がある。日本に出回っているロリータもののなかで、唯一『チャイルド・ポルノ』と呼べるのは、いわゆるロリータ裏ビデオである。これには、ヨーロッパ製8ミリ作品のビデオ起こし、東南アジアもの(ほとんどがタイ)、日本人ものの3ジャンルがあって、最も人気を集めているのは、言うまでもなく日本人少女の本番ビデオだ。

83年春に流通が始まったロリータ裏ビデオ第1号『処女の泉』(13歳)、小太り少女のヨガリ声が鮮烈な『少女伝説』(推定年齢13~14歳)、八木さおり似の美少女緊縛もの『ザ・変態』(13歳)、局部のアップ・シーンが話題になった『フィックス14歳』(14歳)、フェラチオありバックありの『夢まくら』(推定年齢14~15歳)……(いずれも裏ルートで現在入手可/引用者注:今は無理だろう)

少女の年齢は、流通当時、さる筋に確認を取ったものだが、なかには『少女の道草』や『変な感じ…』に出演した12歳の少女のように、製作者が逮捕され、新聞報道で年齢が明らかになるケースもままあった。余談ながら、これらの作品は、マニアのあいだで“お墨付き”ロリータ裏ビデオと呼ばれる。

ロリータ裏ビデオに対する当局の対応はきわめて迅速にして厳しいゆえ、ここ7~8年、コレといった新作は出ていない。まあ、『危険なおじさん』シリーズなど、東南アジア少女の本番ビデオは、ポツポツとリリースされてはいるらしいが……。

 

オタク文化としてのロリータ

85年の『ヘイ!バディー』の廃刊、87年のビデ倫通達、88年の写真集摘発。一連の事件を経て、一時下火となったヴィジュアル系ロリコン・メディアは、90年代入り、またぞろ勢いを取り戻した。

88年12月に創刊されたロリータ専門誌『アリス・クラブ』(白夜書房)は、隔月ペースながらも部数8万を達成。増刊のロリータ・データベース『ミルク・クラブ』(通巻4号)は眩暈を覚えるほどの充実ぶりだし、今年になって、女子中学生に的を絞った『プチミルク』(隔月)と『フィフティーンクラブ』(隔月予定)が少年出版社(現・コアマガジン)から相次いで発刊。また、読み物主体の『小説アリス』(綜合図書)は、8月売りから月刊になるという。

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ビデオのほうも盛況で、HAL、R&S、ランド企画といった通販メーカーが、続々と新作を放っている。何よりも驚きなのは、老舗のペペ(高田馬場)に追いつけ追い越せとばかりに、ロリポップ(上野)、ランド企画(駒込)、ミミィ(大久保)、エンジェル(新宿)と、昨年だけで4軒のロリー夕専門店が都内でオープンしたことだ。

今もってあからさまなワレメの露出はままならぬようだが、それでも、部数8万の定期刊行物が存在し、専門ショップは1軒からいきなり5軒に急増。これをして、“第2次ロリータ・ブーム”の到来!と見る向きは多い。このまま拡大していくのか、ハード路線が甦るのか、あるいはオタク文化のひとつとして海外に広がっていくのか。う~ん。

本稿の執筆にあたり、僕は方々に取材して最近の情報を収集した。が、結局、第2次ブームの実態については、表面をなぞる程度にとどめた。かつての作り手である僕としては、「一般誌で取り上げられたばかりにお上に潰される」という事態だけは避けたかったからだブルセラの例もあるしネ。詳しく知りたい人は、専門誌を買って読めばいい。メジャー誌の編集諸兄よ。ネタがないからって、マニアの“密かな愉しみ”を奪うようなマネはしないように!

 (青山の記事の3年後、1997年に書かれた斉田石也の記事)

 

番外・変態さんと犯罪者「真正ロリコン列伝」

ここまでやると、もうアウト。絶対マネてはいけません!

青山正明(文筆家)

いわゆるロリコン業界の現場から離れてもう10年近くになる。だが、今でも交遊関係だけは現役(?)で、ロリータ趣味を持った知り合いが何人かいる。雑誌作りに関わっていた頃の友達からその友達を紹介され……というようなアンバイで、“ロリコン仲間”の命脈は保たれてきたのである(偉そうに言うことではないが)。

ひと口にロリコンと言っても、何に悦びを見いだすかは個々人によって異なる。アニメのマニア、美少女CMのコレクター、ロリータのムックやビデオを見つつ、自己完結型リビドー処理、に励む者。分けても、僕の好奇心を刺激してやまないのが、正真正銘のロリコン野郎、専門用語で言う「ペドファイル」である

19世紀末、ドイツの精神病学者クラフト・エビングは、その著書『性愛の心理』(旧邦題『不完全なる結婚』)の中で、ペドフィリアという言葉を創出した。これは、ギリシア語のペド(子供)とフィリア(愛)から作られた用語で、一般に、“小児性愛”と訳される。そして、ペドファイルとは、ペドフィリアの性癖を持った人のことを指す。

 

少女に○○入りヨーグルトを!?

真正ロリコンペドファイルの願望はただひとつ。「少女とヤル」である。しかし、説明するまでもなく、この行為は違法なため、ペドファイルはなかなか本懐を遂げられない。そこで、仕方なく代替行為に及ぶのである。

彼らの多くは、まず少女と友達になることから始める。少女に近づく方法は色々あるが、大学生なら家庭教師や塾の講師、それからプールの監視員、社会人ロリコンの場合は、ボランティア団体に加入し、休日、孤児院で働くといのがよく使われる手だ。

つい先だって、銀行勤めの友人S(31歳)が、都内の某ボランティア斡旋団体Tに赴き、「学習指導者」として団員登録を済ませた。その際、担当者に「希望施設の条件」を問われたSは、「女子中学生が多い施設」と真顔で答えたそうだ。

では、友達になった後は、どうするか。それは人によってまちまちで、自分の部屋に連れ込んで一緒に漫画本を読んだり、映画を観に行ったり、喫茶店でお話ししたり(いったい何を話すんだ!?)と、いたってメンタルな関係のままでいる者もいれば、ちょっとした悪戯をしでかす者もいる。

例えば、これまた知人の大学生T。彼は塾で知り合った小学4年生の女の子を、少女漫画をエサに下宿に招き入れた。そうして頃合いを見計らい、「おやつだよ」と、差し出したのはヨーグルト。ここまで書けば察しがつくだろう。そう、Tは教え子の女の子に、あらかじめ用意しておいた自分の精液入りのヨーグルト(!)を食わせたのだ。

そういえば昔、自分の精液をスポイトに入れ、それを持って早朝の児童公園巡りをしていた奴がいたっけ。そいつは公園に設置された飲料用の水道の蛇口に精液をつけ、少女がそこに口をつけて水を飲む様子を眺めては喜んでいた。

土方のおっさんとかがイノ一番で口をつけると、悲しくて……」屈折の極みである。

 

ロリコンから、犯罪者への逸脱

どうしても、少女の裸をナマで見たい。そんな願望をいとも簡単に実現してくれるのが、公衆浴場だ。彼らロリコンにとって最大の関心事は、いつ、父親に連れられ少女が入ってくるか、ということ。風呂場は暑いし、脱衣所は番台の目が気になる。存外、銭湯内で待ち続けるのは難しいらしい。

25歳のフリーターKは、4年ほど前、ついに究極の銭湯を発見した。京浜急行U駅下車、徒歩5分にあるU湯。まあ、言葉にしてしまえば、どうということもないのだけれど、この銭湯の真正面にはBという喫茶店があって、Kはそこで2、3杯コーヒーを啜りながら、銭湯に入る客をチェック。そして娘連れのオヤジを見たら、急いで会計を済ませ、銭湯にダーッシュ! ──銭湯内での少女へのアプローチ法に関しては、読者の皆さんのご想像にお任せしたい。

さて、こうした“ヘンタイさん”にとどまっているうちはまだマシなほうで、なかには稀に“犯罪者”になり果ててしまう者もいた。

僕がロリータ系のビニ本をこしらえていた頃、Fという男がしばしば編集部にやってきた。当時、30代半ば、定職に就かずぶらぶらしていた彼は、根っからのペドファイルで、投稿用にと、いつも自分で撮った写真やらビデオやらを携えていた。

今思えば、どれもこれもすこぶる危ない内容だった。家に連れ込んでの単なる裸の写真ならまだしも(これも立派な犯罪行為だが)、このおやじ、少女のスリットにペニスを擦りつけたり、押し当てたりと、神をも恐れぬ暴挙に打って出、それをクローズアップで撮影していたのである。相手の子は決まって小学校低学年。「アニメを見せるとか、お菓子をあげるとかして、気をそらすのが泣かせないコツ」「小学校3年生ならペニスの半分ぐらいまで入る子がいる」。

僕に写真やビデオを見せながら、彼は自慢げにそんなことを語っていた。

「Fさん! Fさん!」

女性の声。Fの家のドアを激しく叩く音。幼女と戯れていた最中、公園で娘をFに連れ去られたと知った母親が、慌てふためいて彼の家にやってきたのだ──!!

その一部始終を収めたビデオを見せられたときには、ホント驚いた。

その場はどうにか切り抜けたものの、Fはそれから約1カ月後に逮捕される。当然の報いだろう。

少女の膣より、少年の肛門のほうが入れやすい

そう言ってはばからなかったHが捕まったのも、確か同じ頃だった。彼は男子幼稚園児2人に50円ずつやって、公園のトイレで彼らのチンチンを睾丸ごと頬張った……。

 

ペドファイル・グループ

犯罪者になるのは御免と、たくさんのペドファイルがタイ北部の街チェンマイに飛んだ。ごく一部ではあるが、インドのボンベイやフィリピン、台湾、ブラジル、アルゼンチンなどに渡った者もいた。むろん、これらの国でも子供との性行為は認められていない。しかし、事実として、置屋には14~15歳の娼婦がいる。

最近の日本では、5万円も出せば女子中学生が買えるそうだが、それでも、少女買春を目的として海外を訪れる男の数は減ってはいないと思う。

東南アジアだけで毎年60万人から80万人の子供(国連の定義では18歳未満)が、性的犠牲者になっているという。加害者の大半は欧米の白人男性で、興味深いのは、彼らが組織的、に少女買春を行なっているという点である。

「8歳前にセックスを!」。そんなスローガンを掲げる会員数約5千人の米ルネ・ギヨン・ソサエティ、幹部が公の場で「セックスに同意できる年齢を4歳にまで下げろ!」と発言し、物議を醸したヨーロッパ最大の地下組織ペドファイル・インフォメーション・エクスチェンジ。また、アメリカのハワード・ニコルス・ソサエティは会員に向けて『子供とセックスする方法』と題されたパンフレットを発行している。

団体行動が好き、と内外からよく言われる日本人。ところが、実践派ロリコンに関しては、日本に数百から数千人規模の組織があるという話は聞いたことがない。相互に連絡を取り合う場がないためか、それとも、組織を形成するほどの数がいないのか?

重々しいエピソードを羅列してきたが、実際、買春や犯罪にまで及ぶペドファイルは、日本ではまだ極々少数である。ロリコンと言われる者の大半は、コミックスやグラビア、ビデオといったメディア内世界の住人にとどまっている。どっちも、ヤバイ存在であることに変わりはないのだが……。

*1:初期のオタク文化に集まった若者のなかにも最初かロリコンの傾向を持った者が決して少なくなかったらしい

例えば『アニメック』1981年第17号の特集「“ろ”はロリータの“ろ”」では「SFファンにロリコンが多い」ことが指摘されている。そこで例に挙げられていたのが、1979年にSF大会と呼ばれるSFフアンのイベントに参加した26歳男性の体験談だ。

イベントのため上京した彼は浅草のポルノショップを訪れ、輸入物の少女ヌード写真集を買おうとした。ところが複数の店を回っても、10歳前後のモデルの商品が売り切れている。そこである店で店主に聞くと、「さっきあんたと同じようなバッジ(SF大会参加者用)をつけた連中がみんな買いしめていったよ」と答えたという。オチができすぎのような気もするが、当時の貴重な証言には違いない。「ロリコンはパロディだった」と断言する集団があった一方で、ポルノとしてそれを求めた集団も早くから存在していたのだろう。(高月靖著『ロリコン』112頁)