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米沢嘉博「同人誌エトセトラ」第1回「シベール神話の誕生」




米沢嘉博阿島俊名義で『レモンピープル』創刊号(1982年2月号)から休刊号(1998年11月号)まで18年間にわたり計187回連載していた同人誌紹介記事。創刊当初の題は「ロリコン同人誌ピックアップ」。'82年12月号のリニューアルから「同人誌エトセトラ」に改題。雑誌の性格上男性向け作品を中心としながら全ジャンルを対象とし、時には漫画同人誌の歴史にまでも言及した。休刊6年後の'04年9月、久保書店から350頁超の大著『漫画同人誌エトセトラ'82~'98』として単行本化された。記念すべき連載第1回目には『シベール』が取り上げられている。




漫画同人誌エトセトラ'82~'98―状況論とレビューで読むおたく史

イントロダクション

この本が何であるかの説明と購読のおすすめ

本邦初のロリコンマンガ誌として『レモンピープル』は81年12月に創刊された。それは同時に同人誌の描き手を中心にしたエロチックコミック雑誌のスタートを意味していた。この雑誌で創刊号より連載がスタートした同人誌レビュー「同人誌ピックアップ」は、10回の1頁連載を経て、中とじから平とじに変わった同誌で「同人誌エトセトラ」というタイトルで再スタートを切った。そして98年10月に同誌が休刊するまで、計187回、連載され、20年近くに渡る同人誌の動きを、状況論、事件報告、レビューによってリアルタイムでレポートするという結果になった。

今はプロ作家になった描き手たちの同人誌時代が紹介されているだけでなく、千冊以上に及ぶ同人誌の記録はここにしかない。この本では、この「同人誌エトセトラ」をすべて収録し、年毎にまとめることで、同人誌の流れをレビューと共に読めるようにした。さらに、連載中に何回か試みられた「同人誌の歴史」の部分を取り出し、新たに書き下ろす形で80年までのマンガ同人誌の歴史を序章として収め、連載終了以後の99~04年までの同人誌の大きな流れを巻末の方にまとめてある。明治期から現在までのマンガ同人誌の通史としても、この本は読むことができるはずである。

頁数や構成の関係もあって、連載時のものから図版を省いた部分、単なるアイサツやイベントのお知らせ、次号予告など削ったところもあるが、明らかな間違い以外は書き直していない。予想や未来の不安については当たったところもはずれたところもあるが、それも、その時々のレポートとして読んでもらえればいいだろう。今となっては説明をつけなければ解らない固有名詞、語句については年毎に脚注という形で補足説明してある。

この本は、貴重な記録であると同時に、そのボリュームとカバーされた時代によって二度と書かれることのない一冊であることはまちがいない。同人誌研究の資料としてだけでなく、マンガのもう一つの歴史を書いた本として、様々な発見のための本として、手元に置かれることをお勧めしたい。

阿島俊(米沢嘉博