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『突然変異』青山正明インタビュー(81年秋・慶応義塾大学図書館/第23回三田祭 壁新聞)

377名無しさん@お腹いっぱい。2021/11/23(火) 22:52:44.33id:Yke+AjLZ>>378>>390

青山正明の大学時代のインタビューがあるけど、需要あるかな?
あるならここにボチボチ書き込んでいきます
内容は「突然変異」の幻の創刊号の話などです
378名無しさん@お腹いっぱい。2021/11/24(水) 11:00:11.90id:Fb6+DBZE
>>377
あるある
よろしく!
需要はありまぁす!
青山正明インタビュー
日時:1981年秋(『突然変異』は2号まで発刊されていた)
場所:慶応義塾大学図書館
経緯:この年の大学祭(第23回三田祭)に際し、室内バザーを企画した某学生団体が、壁のスペースを利用して模造紙に記事を書いて張り出すことにした。雑誌や出版に関心の高いその団体は、同じ慶大生で「突然変異」の中心人物の青山正明に注目してインタビューを申し込み、了承された。以下のインタビュー内容は、三田祭で展示された記事そのものである。質問者の発現は「ー」をつけて区別した。

ーはじめまして、ではまず創刊前後の様子などから・・・。

 ええ、まず今の編集メンバーのうち車田と西村が同窓で、それまで本なんか作った事の無かったこの2人が急に思い立って、昨年の春40万円で神楽坂に事務所を設けて広告打ったり事務所回ったりして人を集めて・・・
例えば創刊号の表紙描いたのが、アリス出版の『スノッブ』で「大島リンのネチネチパンティープレゼント」ってのをやってた人で、まあこの人はつい最近まで『HEAVEN』の佐内順一郎の恋人だった人で・・・そこらへん、マイナー系がらみの人がひっかかって・・・。
そこで去年の三田祭に創刊号を間に合わせるつもりだったのが、出来たものの内容がイマイチで、印刷所までは行ったんですけどやっぱりそこで直前にツブしちゃったんです。

 それでもっとスタッフを充実させなきゃってんで今里と、『メディアバルーン』からたどって僕が呼ばれて・・・で、今の、つまり創刊号のメンバーがそろったんです。それがちょうど去年の今頃です。

 ー幻の創刊号があるわけですか、なるほど。

 で、とにかく情報誌なんかは大手のがあるんで、無いものをやろうってことで、僕は前面にグロを出して作ろうと思ったんだけど、編集長が“ファッション誌がイイ”とか言い出してその辺で変わってしまって・・・とりあえず4人の持っている、溜まっているものを全部吐き出そうと。1号、2号ともみんな3日か4日で原稿書きあげたんです。

 ーウンコみたいですね。

いや本当に。雑誌のウンコというか・・・。とにかく面白ければなんでも載せるというー。
 ーそこらへんが極私的というか、アナクロ気味のウォーホルやニコにしても、“今なぜ〇〇なのか”と言う風なもっともらしさが全然ないんですね。
例えばフロイトヴィトゲンシュタインも出てきましたけど、突発的にラブコールしてそれっきりなんですね、あっけらかんと。ロリコンにしてもグロにしても読者の興味を引いて、お代を頂こうというサモしさが感じられない。“ワシらの狂いぶりを見よ!”ってな具合で。
―でも、あの調子である程度続けることによって市民権みたいなものを得る、そのぶん、武器となるイカガワシサのボルテージが減るというか、そこら辺はどう考えてます?

 同じ傾向でボルテージを上げようとすると、部数が増えて読者が増えてくと無理なんですね。ボルテージを上げつつ内容を変化させるしか無いですね。次の3号で多少内容が変わります。今の方向じゃこちらももたないんです。
やろうと思えば企画は色々あるんです。子供の歯を抜いてお守りとして売るとか、芸能人の食事を調べて同じものを食べて同じクソを作ってみるとか・・・。

―ますますウンコ雑誌になりますね。

 ・・・でもそんなのは本当にやりたい事じゃないし、実際売っていくには読者に何かを与えないと、それらしい正当な目的が無いとやっていけないんで。1号、2号は4人がやりたいことをやったらそれがとりあえずウケたという・・・
で、話題だけは撒いたんで、それに乗って4号あたりはプロのライターにも書いてもらって完全な商業誌に、『突然変異』の名前通りガラっと変わって、とにかく4号ぐらいから方向転換して読者にパワーを与える雑誌をやっていこうと。例えば『遊』ってのは、あれは学問のアクセサリーって言うか遊びで、あれが実際に血や肉になるようなーコリン・ウィルソンあたりの雰囲気のものを、と。
『HEAVEN』にしても、読んだその場で楽しいってだけの、澁澤龍彦あたりみたいに“浪費”なんですね。読んだあと虚しいだけです。あれじゃあツブれます。読んでる間だけ高揚するってのは。

あと、『突然変異』で気をつけてるのは、内容はグロいけど写真でグロいのは出さないってことで、『ヘッドロック』なんかは失敗ですね、アレ。あれじゃ売れない。『突然変異』は読者が半分女性なんで、スタッフ参加の申し込みなんか女性のほうが多いんですよ。女子高生から電話がかかってきて、「すぐ行くから」とか、そこらへんは約得ですよ。
 まあ1号2号ってのはコンセプトが無かったわけです。

―そこら辺がスリリングな魅力なんですけどね。

 ええ、あのままでもある程度の読者はつくだろうけど、何年もやってく自信が無いんで、ちゃんとしたものを、と。
でも4号にしても人にパワーをつけるものを半分、あと半分を変態チックなものとか、映画にしても音楽にしても、かなりねじくれたものを入れていこうと思うわけです。
まあ多少内容がまともになっても、不気味さとか毒とかは消さないつもりですが、その反面ウラ本っていうか、通信販売で、何もかもグチャグチャに盛り込んだ会員制の雑誌『エゴマニア』ってのを考えてるんですが、まあヤクザな商売でして。あと歌謡曲も取り上げたいんですけど、歌謡曲とプロレスは今マイナー雑誌の二本柱で、どこでもやってるんで・・・。

 ープロレスと言えば、この夏自費出版で『板坂剛の世界』を出した人に会ったんですけど、紀伊国屋書店に委託販売を断られたそうです。

いや実は、『突然変異』も断られたんですよ。あそこは雑誌仕入れの担当の人がエラく厳しい人で。あそこに置きゃ、絶対ハケると思うんですけどね。でっかい書店で平積みでボンと置かれると売れるんですね、『ポパイ』なんかの横で。
『ポパイ』とか『ぴあ』とか売れる雑誌、分かるんですよねそこらへん、やっぱし人にとって必要なものから出てくってのが。

―その“必要”っていう幻想をアオるのがまたうまいんですよね。

ええ、だから、もしああいった本が出てない状態だったら、僕もああいうのを作ってたと思います。
タイプミスや誤変換がチョコチョコありますね、申し訳ないです
でも、これがあの時代の青山正明の「肉声」です
あと少し残ってて、「いつもチンポ出して歩いてるような人にゃできないですよ」とか、そんな話です
広告取ってきたり書店回りしたり、まだミニコミの気分なんですね。本当は広告なしでやりたいんです、版元がついてくれさえすれば。早く雑誌コードも取りたいんですけど、気ぃつけないと、変な感じでエロ本なんかと置かれちゃうとね・・・。

―『ズームアップ』なんかが苦しんでたみたいに。

マイナーで売れてなきゃ何でもいいという人も一杯いるんですが、先の事を考えると、僕ももう3年生だし。多
少食えるようにはなりたいなあというのもあるし、マイナーを足場にして、というのもあります。

―ありますね、単なるマイナー中毒ってのが。僕も他人のことは言えませんが・・・。話を戻して、読者からの投書は多いですか?

 ええ、一杯、写真やらなんやら。おかしなのも一杯来ましたね。読者の中でスタッフ参加の名乗りをあげたりする人で、『突然変異』のメンバーは常に本の内容にあるようなことをしてるんじゃないかという意識で接してくる人とか。
実際、本を作って金を集めて書店回りをして印刷所と交渉して等々やるとなると、本当にいつもチンポ出して歩いてるような人にゃできないですよ。あくまでも僕の場合も、活字にした場合のキチガイという感じで。

読者にすごい人が一人いて、浪人ですけど、ものすごいヤバイことを書いてくるんで今までボツにしてたんですよ。でも3号はそれではページが無くなりまして、もう捕まってもいい、載せちゃおうというんで、ポンと・・・。「お年始ボランティア」っていうんですけど、楽しめますよ、今度の3号は。

―発行が遅れてるみたいですね。

今月の終わりごろになると思います。
―話が変わって、マスコミの反応ですが・・・。

色んなのが取り上げたんですが、一番うれしいのが『ヘイ!バディー』で高取英がエラくほめてくれたくれた
事で、ひどいのは朝日新聞で、椎名誠に「あんな本は本屋から撤去せよ」とかメチャクチャ書かれて、かえって宣伝になったぐらいです。

―『噂の真相』や『週刊宝石』とかはロリコンブームとからめて取り上げてたようですが。

平凡パンチ』や『スポニチ』もです。ロリコン雑誌を作るつもりは全然ないです。あのパートは僕が受け持って、で、僕は中学の頃からチャイルドポルノとかに凝ってて、たまたまその部分が時流に乗ってしまって。3号あたりでは削ります。

―あと、何か言いたいことがあれば。

 ウ~ン・・・腹立つのがフリーライター。あそこらへんは約束も守らないし、言った事をキチっと書いてくれないし、ケーハク極まりない。一番ひどいのが、『アングル』の野沢ってのが横須賀まで出てきて、わざわざ夜出向かされたら何のことは無い、エロ本が欲しいって言って、ありゃヒドいんで、次の号で名指しで叩いときます。

週刊宝石』の取材にしても、フリーの亀山ってのが来て、原稿は必ず内容確認させる、大学名は絶対に出さないって事だったのに・・・。

―出してましたね。

あれもひどい。

―こちらがマイナーで弱い立場だと思って。

そうそう、弱きをくじくってのは好きなんだけど、やられるとたまんないっていう・・・。とにかくフリーライターってのは質問もいい加減で何を聞いてるのか分かんない。だから『写楽』で取材があったんだけど、フリーみたいなんで拒否して。

―もったいないような気もしますが。

ああいうところへ行っても疲れるだけで・・・。

―はあ、じゃあこの辺でこのインタビューも切り上げましょうか。きょうはわざわざどうもありがとうございました。
以上、ちょうど40年前、21歳の若き青山正明へのインタビューでした
三田祭の展示では「大塚雅美氏へのインタビュー」という、本名での記事だったようです

ちなみに展示記事でのプロフィール欄には『法学部3年生 ジャーナリズム研究会に所属
“メディアバルーン” “カレン”の創刊に関わる ユーロロックプログレを好み、その手の雑誌の創刊も考えるが、“フールズメイト”に先を越される “ポップなオカルト誌”の構想アリ 愛読雑誌は“女性自身” “アサヒ芸能”と書かれています。
資料には1981年11月19日の日付があるけど、インタビューの日付なのか、展示の日付なのかは不明。

どちらにしても、40年前のちょうど今頃、慶応大学の三田キャンパスではこのインタビューが掲げられてたわけです

どこまでがホンネでどこまでがポーズなのか、青山氏自身が一番どうでもいいと思ってそうだけど、なんでもいいから吐き出したい衝動と、読者にとって一時の娯楽で終わる情報でなく、人間の在り方を変えるようなものを届けたいという真摯な理想のせめぎあいがうかがえるような、今となっては貴重な内容だと思います
ありがとう
これが21歳の頃なら、ずっと軸がブレない人だったんだろうな
だけどそのブレなさに疲れたようにも思える
388名無しさん@お腹いっぱい。2021/11/28(日) 00:31:48.27ID:3W/nSF0L
>>387
386で「なんでもいいから吐き出したい衝動」と「人間の在り方を変えるようなものを届けたいという真摯な理想」って、インタビューの
印象を書いたけど、もう一つ「“売れたい”っていう率直な気持ち」っていうのも感じるね。僕は逆に、この三つ巴のせめぎあいに
常に振り回され迷い続けた人だったのかな、とも思った。

自分の中のエネルギーを、ものを書くとか雑誌や本を作るって形で世に問うのも、一種の表現行為だと思うけど、それはこの三つ巴に
巻き込まれながらの綱渡りなんだろうね。“売れたい”っていう欲求も、単なる売名じゃなくて、より多くの人に訴え、より多くの人を動か
し、必要とされたいっていう、表現者の宿命なんだろうね。

資料的価値としては、「突然変異」に幻の創刊号があったことや、青山がスタートメンバーじゃなくって途中から呼ばれて参加した事、
最初からコンセプトがはっきりしてたんじゃなくて方向性が迷走してたことなんかは、わりと知られてなかったんじゃないだろうか。
ちなみに、このインタビューを企画した学生団体ってのは、大学祭で古本バザーを開いてた文学部の連中らしい。
>>383
ありがとうございます
ゆっくり読もうと思います
>>377
需要ありすぎです 
貴重品うれしい... 時間をかけながら大切に読みます
391名無しさん@お腹いっぱい。2021/12/11(土) 22:11:09.71ID:9aFR3I1t
謎の眼病を患ってうつになったのか惜しい人を亡くした
人並外れた知性だった。物静かなタイプだった。しかしその知性と同様に巨大な好奇心を原動力に、
自分を実験台にする事を厭わず、行動に際しては、世間の基準や常識に(法律にさえ)縛られない人だった。
“同類”はいなかったので、瓶に詰めた手紙のように、それをエンターテイメントに加工して発信し、受信した

誰かの“何か”に届くことを願った。

鹿威しに少しずつ水がたまる。最後の一滴が落ちた時、一気に均衡が破れてすべての水がぶちまけられる。
どの一滴が本当の「原因」だったのか誰にも分からない。結論付けられることを青山は嫌うだろう。
多分青山は自分が「謎」であり続けることを望むだろう。青山にとって、自分や世界がずっとそうであったように。
青山正明BOTツイッターは名言が多くておすすめ
ファンにも恵まれている。
ここに書いてる人のレベルが高い 
青山正明の文章は読めない漢字が多いところが好きだ
395名無しさん@お腹いっぱい。2021/12/19(日) 23:15:40.63ID:0KwHDbbG
21歳の、グロネタの扱いに迷っている青山、ロリコンブームを警戒している青山、「僕ももう3年だから」と“職”の心配を
している青山・・・これから世に出ようという、大学時代のインタビューを読んだ感想を、20年後の青山にぜひ聞きたかったよ

没後20年経ってもスレが立ち続けてるんだから、確かに青山は読者に「血や肉」を与えてくれたんだろう
それは体を張った青山自身の血や肉に違いない

でも青山、読んでる間だけの娯楽でいいじゃないか、浪費でいいじゃないか、『HEAVEN』の高杉弾山崎春美みたいにシレっと
長生きした青山を見たかったよ