70年代の自販機本から、90年代のデジタル系アンダーグラウンドまで!
アンダーグラウンドでいこう! 自販機本からハッカー系まで(青山正明×永山薫)
宝島社『別冊宝島345 雑誌狂時代!』1997年11月15日発行
- 70年代末、『宝島』から自販機本へ!?
- 同じ白夜系でもビミョーに違う
- エロ本はあんまり目立っちゃダメ!?
- モノクロページのコラムはほとんど放し飼い状態だった
- 不毛の80年代後半から90年代へ…死体とか奇形とか、もう飽きちゃってあまり関心ないね
- 素人がエログロを実践する時代
- 細分化の時代にあえて総合誌を―今はテクノ系音楽情報誌や薬物関係のミニコミに面白いものが
- 自販機本はなぜ消えたのか?
- 『ガロ』もやっぱりもったいないといえばもったいないよね
- デジタル系アングラ雑誌の可能性
──今回は、いわゆるアングラ系の雑誌の流れみたいなものを振り返ってみたいんですが…。
青山:あんまり昔のこと覚えてないんだけど、面白かった時代っていうと、やっぱり『ジャム』『ヘヴン』*1の頃。要するに、エロとグロと神秘思想と変物、そういうものが全部ごちゃ混ぜになってるような感じでね。大学生の頃にそこらへんに触れて、ちょうど『ヘヴン』の最終号が出たくらいのときに、『突然変異』*2の1号目を作ったんです。
永山:高杉弾に原稿依頼をして断わられたという(笑)。
青山:メジャーでいうと、工作舎が『遊』*3を出してて、みんなああいうアカデミックなものも面白いんじゃないか、と思い始めてた。フーコー面白いんじゃないか、とかね。その流れをエロ本もかぶってましたね。
永山:当時のカウンターカルチャーとかサブカルチャーとか、そのあたりっていうのは『宝島』がある程度押さえてたんだけど、そこに納まりきれない部分が自販機本なんかに噴出してたみたいなところがあった。実際、山崎春美*4なんかにしても、オレなんかにしてもそうだけど、自販機本と『宝島』と両方で書いてたライター、多かったですね。
70年代末、『宝島』から自販機本へ!?
青山:『宝島』も76~77年くらいにマリファナ特集*5やったりとかして、飛ばしてたんだけど、やっぱりだんだん商業路線になっていって、そこで押さえきれないものが出てきた。それが自販機本、エロ本に流れていったんですね。そのときやっぱり中核でいちばん面白かったのが、群雄社が出してた『ジャム』と『ヘヴン』。『ヘヴン』は、羽良多平吉*6さんがアートディレクターで、ビジュアル的にもカッコイイっていうのがあった。音楽情報も入ってたし、エロ情報も入ってたしで、もうごちゃ混ぜ。『ジャム』でいちばん話題になったのはやっぱり山口百恵のゴミ箱あさりですよね。かたせ梨乃のもやってたな。
永山:かたせ梨乃なんてやってたっけ?
青山:やってました。でっかいタンポンとか出てきて、体でかいからやっぱりタンポンもでかいなって、山口百恵のほうは確か妹の学校のテストの破ったヤツが入ってて、10点とか、20点とか、それぐらいだったの。それとか、痔の人の肛門の写真のアップをズラーッと並べたり。とにかくグロを思いっ切りやって、そこに思想、カルチャーが入って、エロが入って、薬物が入って、当時はインディーズの走りの時代でもあったから、ナゴムとかそこらへんも出てきてた。
永山:だから、エロ本が解放区になってたんだね。写真ページでとりあえずエロやれば、一色活版ページは何やってもいい、と。
青山:それがそのまま『ヘイ!バディー』とか『ビリー』*7とかにつながっていった。
同じ白夜系でもビミョーに違う
(白夜書房刊『Billy』『Hey!Buddy』/ともに1985年廃刊)
──白夜書房系でいえば、その頃、『ニューセルフ』とか『ウイークエンドスーパー』*8とかもありましたよね。
青山:そのへんの末井さん*9が作ったものって、僕はよく見てなかったんですよね。
永山:僕も青山くんもそうなんだけど、そういう意味ではエロ本のメインストリームからちょっとズレてたから。
青山:『ニューセルフ』とか『写真時代』とか、確かにすごかったんだろうけど、出てくる人が大物じゃないですか。赤瀬川原平さんとか、南伸坊さんとか。僕らはどっちかっていうと『ビリー』『バディ』にくっついてたから。
永山:同じ白夜系でも、末井班と中沢班ではかなりノリが違ってたよね。重複してるライターもいたんだけどね。
青山:『バディー』は元アイドル系のエロ雑誌だったのが、ロリコンブームの先駆けでそっちのほうにいっちゃって。『ビリー』も最初はカルチャー色が強くて…。
永山:インタビュー雑誌みたいなヤツじゃなかったっけ?
青山:そうですね。もともとB5判くらいの。それで、全然売れなくて、リニューアルしてA4のエロ本になった。
永山:最初に『ビリー』をああいうふうにアブノーマルにリニューアルしたのが小林小太郎。だからあの人が実質的に変態版『ビリー』の初代編集長みたいな感じになりますね。
青山:それで獣姦ものやったり、スカトロやったりして、さんざん怒られて(笑)。
永山:小林さんはのちに叶夢書房に移って、『TOO NEGATIVE』*10を作る。
青山:そうですね。で、内紛があってスタッフ全員引き連れて吐夢から出て、「NGギャラリー」*11というのを作って。そこでいろんなアングラな商品売ったりとかして、今はコビー雑誌の『ウルトラネガティブ』を作ってる。
エロ本はあんまり目立っちゃダメ!?
永山:『ビリー』がすごかったのはコンテキストさえ変えちゃえば文化になるようなことを、文化にしないでやってたっていうこと。それがやっぱり面白いと思うんですよ。そのへんが『バディ』とは違うところで、『バディ』は完全にゴールデン街文化。高取英さんとか、流山児祥さんとか…。
青山:そのへんの人たちが関わって、結構硬派なエロとか、ネタとかもやってたけど、主導はロリコン。それで8万部までいきましたからね。ただ、『ビリー』にしても『バディ』にしても、失敗したのは、A4のグラフ誌であんなことやっちゃったっていう。やっぱり目立ちますからね。目立つところに置かれちゃうし。それで当局に怒られてつぶれたっていう。それをうまくやったのが三和出版で、いま出てる『お尻倶楽部』*12とか、あの手の本は小さいA5の判型で出てる。A5だったらある程度許されるんですよね。置かれる場所も限定されるし。
モノクロページのコラムはほとんど放し飼い状態だった
永山:当時『ビリー』のあとを継いたのが『クラッシュ』だっけ。『ビリー』『ビリーボーイ』ときて、『クラッシュ』。だんだん情報誌性が出てきたんだよね。それと、AVに関しては白夜が『ビデオ・ザ・ワールド』*13を出して。
青山:『ビデオ・ザ・ワールド』も初期の頃は僕にも原橋書かせてくれて、死体写真とか載せたんですよ。そしたら読者からクレームがひどくて。「なんでエロ本買って興奮しようと思ってんのに死体写真なんか載せるんだ」って。
永山:モノクロページのコラムは、ほとんど放し飼い状態で、解剖ビデオとか出てましたよね。
青山:A4グラフ誌で当局に目をつけられて、過激なことができなくなったっていうのと、エロの流れとして、エログロナンセンスの受け皿であったエロ本一色ページというのもだんだん美少女路線、カタログ情報路線に押されていって、そういう情報を扱う本がなくなっちゃったっていうのが80年代半ば。エログロナンセンス、アンダーグラウンドみたいなもののブランクの時期が数年続いた。そこからまたポツポツと、『アリスクラブ』*14のようなロリコン誌が出たり、さっきの三和出版の『お尻倶楽部』みたいなスカトロ雑誌なんかが90年代になってパッと出てくる。そういうふうにエログロ路線っていうのは、80年代終わりくらいからA5判の形で復興し始めましたよね。だけど、そのなかでカルチャー絡みのものとか、ドラッグ絡みのものとか、へんてこ情報っていうのはあまりなかった。
不毛の80年代後半から90年代へ…死体とか奇形とか、もう飽きちゃってあまり関心ないね
永山:それで『危ない1号』*15につながっていくわけね。
(世間に衝撃を与えた青山正明氏編集の『危ない1号』)
青山:『危ない1号』とか、子供向けではあるけど、その前に出た『GON!』*16。『GON!』が出て、『BUBKA』*17が出て、おかしな情報がそういうものに集約されていったという…。
永山:そういう流れありますね。あと、最近の白夜でいえば、不良雑誌がありますよね。『BURST』*18っていうのが。あれはすごく面白いですね。
青山:あれはヘンでいいですね。サイケデリックの特集号は買いましたよ。かつてのアングラ精神を受け継いでるっていうか、いま本で買えるもので面白いものというと、やっぱり『GON!』『BUBKA』『BURST』ということになるかな。
──『危ない1号』は?
青山:あれは自分が関心持ってるテーマでメジャーには取り上げられないエグイものを、ずっとやっていこうかなっていうんで出したもので。ただ、やっぱり売れる部分っていうのは必要だから、死体とか奇形とか、あそこらへんに逃げはしたんだけど、でも、そんなものちょっと見れば飽きちゃうし、もうあまり関心ない。今後の方向というか、やりたいところっていうのはコミュニケーションと精神世界ですね。精神病の原因の9割以上はコミュニケーションの問題なんです。あと、不倫の問題とか、セックスレスとか、そういうことにもコミュニケーションの間題が噴出してる。
素人がエログロを実践する時代
永山:不倫っていえば、僕らとは全然関係ないところで、スワッピング雑誌とか一時ガーッと出てきましたよね。『スウィンガー』とか『アップル通信』とか。あと、投稿写真のブームっていうのがあって、『投稿写真』とか『熱烈投稿』*19とか、これもいろいろ出てる。
青山:投稿も最初は普通のハダカだったりセックスしてるところだったのが、そこにピアスが絡んできたり、ウンコが絡んできたりして、だんだんマニアックになってますよね。そのへんはつまり素人参加なんだけど、そういうところにエログロが面白い展開として現われてますね。結局、今あるエログロって、さっきの『GON!』とか『BUBKA』みたいなガキ向けに流れるか、もしくはエロの投稿方面ですよね。本当にコアとして面白いエログロっていうのが、やっぱり出てない。
永山:『危ない1号』だけなんじゃない?(笑)
青山:『危ない1号』はそれを目指してはいるんですけどね。立場的には、僕は今は「元編集長」なんで……。
永山:オレなんか勝手に決めつけちゃうんだけど、今の若い敏感な連中っていうのは、『クイックジャパン』*20読みながら、『危ない1号』出るのを待ってるっていう感じなんじゃないかな。
青山:『クイックジャパン』は、作ってる編集者にこだわりがありますからね。ただ、あれもなんていうか、ある意味、発掘本みたいなとこがありますよね。
永山:だから今は『お宝ガールズ』*21みたいな“お宝ブーム”になってるでしょう。全般にそうなんですけど、ここ何年かずーっとみんな後ろ向きになってて。
青山:それはありますね。新しいものが出ない。だけど、細分化されてるなかで個別に見ていくと、たとえばテクノ系の音楽情報誌なんだけど、『ラウド』『エレキング』『リミックス』あたりは面白い。行間から読み取れるカルチャーは、『GON!』や『BUBKA』より先いってる。あと、薬物関係ではミニコミレベルではあるけれど『オルタード・ディメンション』と、コミケで売ってるんだけど『ミラクルファーマシー』(注・扱ってるのは合法モノのみ)。この2つがイケてるな、と。ホントにアングラではあるけれども。
細分化の時代にあえて総合誌を―今はテクノ系音楽情報誌や薬物関係のミニコミに面白いものが
──『突然変異』の時代は、この手の細分化されたものってあったんですか?
青山:なかったですよね。やっぱり総合誌志向で。薬も載るし、芸能人ネタも載るし、エロも載るしっていう。
永山:だから、もっとはっきりいえば雑誌志向なんですよ。結局、“雑誌を作りたい”みたいな衝動が先にあったような気がするんですよ。当時のミニコミ誌、アングラ誌っていうのは。
永山:『月刊太腿』*23とか。いろいろあったよね。
青山:だから、僕たちが80年代に送り手として、エロとかグロとか、ドラッグものとか、ヘンな思想とかっていうのを、エロ本なりビデオ雑誌なりでガンガンやってた頃に受け手だった73年前後生まれの連中が、いま送り手になりつつある。そういう連中を全部引き連れたうえで、やっぱり総合誌というものが望まれるっていうか、そういうものを出したいなっていう時代ではありますよね。
永山:それはわかるんだけど、でも総合誌っていう発想自体が売れないものになってきている。
青山:確かにコンピュータ好きなヤツはコンビュータの本買うし、音楽好きなヤツは音楽の本買うし、両方好きなヤツは両方買うんですよね。総合誌だと食い足りないっていう感じになっちゃうから。
永山:だからこれまでも大手が、夢よ再びという感じで何度、何十億もかけてグラフ系の出したりしてるけど、たいていみんな失敗してますよ。そうじゃなくてみんな何を買うかというと、『広告批評』とか、いや、あれはもう流行りじゃないか。『放送批評』とか、『散歩の達人』とかさ。そういうのを買うんですよ*24。
青山:『ニャン2』*25買ってセンズリこいて、『世紀末倶楽部』*26で死体写真と奇形児見て、薬物情報が知りたければ『オルタード・ディメンション』か『ミラクルファーマシー』買って、という形で細分化しちゃってるから。
ネットワークの可能性と限界―アングラ系総合誌の役割を今はウェブが果たしている
永山:だから、まとめて総合にする必要はないんだけど、その中核になるような雑誌が欲しいっていうのはありますね。その中核になって、たとえば薬だったらこれを読め、みたいな。その役割をいま果たしているのが、やっぱりネットワーク、ウェブのほうだと思うんだけど。ただ、ウェブっていうのは全読者に対して開かれてるわけじゃなくて、ハードを持ってる人に限定されちゃうっていうのが弱みですよね。そこにたどり着けない人のほうが多いという。
青山:そういう意味では、情報は情報としてあるとしても、モノを所有するという欲求自体はあると思うんですよ。本の体裁でもビデオの体裁でも、やっぱり形あるものへのこだわりっていうのは消えないと思う。だから、テクノ専門誌があれば、スカトロとか投稿写真誌がある。『GON!』みたいなヘンテコ情報もある、というふうに分散してるけれど、友達とかへンなもの好きなヤツに訊くと、全部買ってたりするんですよ。だったら、そういうものをひとまとめにした中核になるものが出てきてもおかしくはないな、と。
永山:でもそうなるとまた、いい気持ちになろうと思って買ったのに死体の写真なんか載せやがって、とかいうクレームが出るんだよね。オレは純粋に音楽を楽しみたいだけなのに、クスリなんて邪なものが出てるのはけしからんとかさ。出てきますよ。
青山:まあね。でも、『ゲームウララ』*27とかやってたクーロン黒沢なんて、さっき言った73年前後生まれの連中のコアになってもよかったんだけどね。『イソターネット』*28とか、面白いことやってたんだけど、いろいろ事情があって、やめちゃった。とにかく核になるには『GON!』とか、『BUBKA』とか、『BURST』とか、まだヤワすぎる。もっと熱くなってほしいな、っていう。
永山:一つには流通の問題というのもあるんですけどね。
自販機本はなぜ消えたのか?
──流通といえば、昔の自販機本って、なんでなくなっちゃったんですかね?
永山:やっぱり当局の締めつけが厳しかったんじゃないですか。「エロ自販機追放」っていう。
青山:子供が買えちゃうってところで非難浴びたっていうのと、買うまで内容が見れないというんで、表紙だけ見栄えよくして中身はスカってのが結構あったから。そこに普通の書店で『ビリー』とか『バディ』とか、すごいのが出てきちやったら、なにも危険を冒してまで自販機で買わなくても、ということになりますよね。
永山:でも、いろいろあったよね。『EVE』*29とかさ。コレって自販機末期の本だけど、結構面白かったんですよ。編集長の原田さんってのが面白い人で、幻の名盤解放同照とか、あの辺ともつきあいがあってさ。湯浅(学)さんとか、根本敬とか、そういう人たちが描いてたりしてね。蛭子(能収)さんとかが描いてたり、結構、『ガロ』系の人たちもいて面白かったな。このへんがヘンなもの系自販機本の最後じゃないかな。
『ガロ』もやっぱりもったいないといえばもったいないよね
青山:そういえば『ガロ』*30なんて、結構文章ページも充実してるし、核になってもいい本だったという気もするんですけどね。
永山:昔からある意味で空白期があまりないですね、あそこは。
青山:ずっとマイナーのまま貫き通してますよね。
永山:マイナーのカルチャーでずっときてて、そこからいろんな人が出てきたわけだから、もったいないといえばもったいない。ただ、こういう言い方はなんだけれども、歴史的使命っていうか、そういうのは終わっちゃってたっていうのはあるよね。
青山:ずっとマイナーできて面白かったっていえば、ペヨトル工房がありますね。『夜想』*31とか『銀星倶楽部』*32とか。
永山:『月ノ光』とか『牧歌メロン』*34とかね。
青山:僕なんかは、南原企画はちよっとマイナーすぎてついていけない。僕の好みでいうと、『ガロ』はマイナーだけど面白い。でも、『月ノ光』や『牧歌メロン』はつまらない。面白みがない。
永山:だから、あのへんの流れっていうのは、やおい系なんですよ。やおいっていうのはなかなか男には理解できないんです。
青山:ペヨトルの社長さんって、演劇が好きらしくて、そのへんコアにしてサブカル全般を扱ってた。でも当たった特集は『怪物・時型』と『屍体』ぐらいかな?
デジタル系アングラ雑誌の可能性
永山:あと、パソコン系、ゲーム系でもヘンなのありますよね。さっきの『ゲームウララ』もそうだけど、ちょっとハッカー入ってるようなやつ。『ハグニュース』*35とか。どっちもつぶれちゃって、もうないけど。
青山:結局いまコアなのが、音楽でいえばロックからテクノになってるみたいに、紙媒体が電子メディアになってきて、そのなかから『ゲームウララ』とかが出てくるんだけど、速度が追いつかないでつぶれちゃうっていう。
永山:コンピュータ系だと、カウンターカルチャー色の強いところで、『GURU』*36とか、『デジタルボーイ』*37なんていうのもありましたね。つぶれましたけど。あと、その前にマック系の雑誌で、『マックブロス』*38っていうのが出てて、あれも非常にムチャクチャやってたんだけど、つぶれました。
青山:コンピュータ系のやつが、出て、すぐつぶれちゃうっていうのは核になるヤツがいないからじゃないかな。面白い情報を売れる方向に持っていって、なおかつ雑誌媒体として客ウケするところまで考えられる修練を積んだ人。そういう編集者が上にひとりいれば違うと思うんだけど。コンピュータ系の人ってみんな若いから、たとえば30代くらいの人で経験ある人をひとり据えて、『バグニュース』なり『デジタルボーイ』なりを作れば、もっとそれなりになった気がするんですけどね。
永山:そういう人はやっぱりあんまり雑誌なんてやらないんじゃない? そういうカリスマ性のある人は、編集者じゃなくてアーティストになっちゃったりとかさ。
青山:全部たばねると面白いですね。僕らと、さっきも言った73年前後生まれのコンピュータエイジのヤツらと、さらにその下の酒鬼薔薇の世代。その3世代が連動して、モノを作り出せば、結構面白いものができそうな気がしますけどね。
*1:『ジャム』『ヘヴン』
高杉弾と山崎春美の自販機本。内容については本文にあるとおり、『ジャム』をリニューアルしたのが『ヘヴン』である。
*2:『突然変異』
青山氏が学生時代に作っていた変態的ミニコミ。キャッチコピーは「脳細胞爆裂マガジン」(3号目からはベーバードラッグ)。表紙イラストを霜田恵美子が書いていたりするのが妙。
*3:『遊』
『ヘヴン』のスタッフ。高杉弾とともにその筋で名を馳せた。ロフトプラスワンでトークに出演したとか。
*5:『宝島』も75~76年くらいにマリファナ特集やったりとか
正確には、75年10月号「マリワナについて陽気に考えよう」。P6参照。
*6:羽良多平古
こだわりのグラフィックデザイナー。「はらだ」ではなく「はらた」と読む。『ジャム』のデザインの一部、『ヘヴン』のアートディレクションを担当していた。
*7:『ヘイ!バディー』とか『ビリー』
前者は80~85年、白夜書房から発行されていたロリコン雑誌。『写真時代』の人脈から高取英、南伸坊、高杉弾なども執筆していた。後者『ビリー』は「スーパー変態マガジン」というキャッチコピーどおり、スカトロ、フリークス、死体写真など、なんでもアリの困った雑誌。
*8:
『ニューセルフ』とか『ウイークエンドスーパー』
白夜書房発行の伝説のエロ&サブカル誌。今や古本屋で2~3万の値がつくとのウワサ。
*9:末井さん
『ニューセルフ』『ウイークエンドスーパー』『写真時代』『パチンコ必勝ガイド』などを作った末井昭氏のこと。P224参照。
*10:『TOO NEGATIVE』
アート系エログロ雑誌。ボンデージ、フリークス、死体写真までてんこ盛り。
*11:NGギャラリー
『TOO NEGATIVE』の世界を立体化したギャラリー&ショップ。
*12:『お尻倶楽部』
ウンコ大好きなスカトロ雑誌。ほかに『ベビーフェイス』、オシッコ大好きな人には『聖永クラブ』なんてのもある。
*13:『ビデオ・ザ・ワールド』
数あるAV誌のなかでも、バツグンの批評性を備えていた雑誌。
*14:『アリスクラブ』
白夜書房から出ている美少女ロリコン誌。80年代半ばに『アリスくらぶ』というマニアックなロリコンマンガ(ひろもりしのぶ、藤原カムイらが描いていた)が出ているが、それとは別物、ロリコンマニアのバイブルである。
*15:『危ない1号』
かつて青山正明が編集長を務めていたデータハウス発行のバッドテイスト雑誌。現在2号目まで発売中。
ミリオン出版発行の「世紀末B級ニュースマガジン」。編集長は元『ディーンズロード』の比嘉健二氏。P229参照。
『GON!』のマネッコ雑誌として創刊。しかし徐々にスタイルを変え、現在ではお宝メインの“ヘンなもの雑誌”に。コアマガジン(白夜書房の関連会社)発行。
*18:『BURST』
「本邦初のタトゥー&ストリートマガジン」と発打たれたハイテンションかつディープな不良カルチャー雑誌。
*19:『投稿写真』とか『熱烈投稿』
この2はまだおとなしいほうで、せいぜいアイドルのパンチラや、女子トイレ盗撮、恋人写真くらい。『アップル写真館』とか過激なものになると、ナンパハメ撮り、野外露出、SM調教など治外法権状態に。
太田出版発行のサブカル雑誌。かつて飛鳥新社で『磯の毛の謎』を大ヒットさせた赤田祐一氏が編集長。ちなみに表紙デザインは『ヘヴン』と同じ羽良田平吉氏。
アイドルや女優の売れなかった頃のレアな写真(もちろん水着やヌード)を発掘する雑誌。類似誌もたくさん出ている。コアマガジン発行。
中央大学に昔あったミニコミ誌。えのきどいちろう氏らが作っていた。P27参照。
*23:『月刊太腿』
『放送批評』行政通信発行
『散歩の達人』P246参照
*25:『ニャン2』
正式名称は『ニャン2倶楽部Z』。現在最も鬼畜なノリのエロ系投稿写真誌。
*26:『世紀末倶楽郎』
ここ2~3年流行の悪趣味本の一つ。1号目の特集はチャールズ・マンソンとシャロン・テート殺人事件。発行はまたまたコアマガジン。アングラはコアマガジンに限る?
*27:『ゲームウララ』
コアマガジンから発行されていたゲーム雑誌。といってもフツーのゲーム紹介とかじゃなくて、裏ソフトとか非合法ネタ満載。いわばゲーム『ラジオライフ』。
*28:『イソターネット』
インターネットの誤植ではなくてクーロン黒沢が主宰していたホームページ。
*29:『EVE』
ピストン原田氏が編集長を務めたカルトな自販機本。ガロ系の人のほか、桜沢エリカとか霜田恵美子とかも執筆していた。
*30:『ガロ』
いろいろあってとうとうつぶれた。合掌。P200参照
オシャレでグロテスクな世紀末、といった趣の特集本。『劇場・観客』『上海』『飽食』などといったマニアックな特集を連発。
「夜想イラストレイテッド」と銘打たれた『夜想』の別冊。丸尾末広、吉田光彦、山田章博、花輪和一といった“いかにも”な人たちが執筆していた。
オシャレでグロテスクな世紀末、といった趣の特集本。『劇場・観客』『上海』『飽食』などといったマニアックな特集を連発。
*34:『月ノ光』とか『牧歌メロン』
少年とかレトロとか、なんかそういうものがこちゃ混ぜになった雑誌。『月光』→『月ノ光』→『牧歌メロン』と出世魚のように名前を変えた。『秘密結社』『拷問と刑罰』『未来帝国・満州の興亡』などという特集があった。
*35:『バグニュース』
かつてのコンピュータオタクたちのバイブル。
*36:『GURU』
とてもパソコンとは思えないサブカルコラム満載の雑誌だった。P204参照
*37:『デジタルボーイ』
*38:『マックブロス』
技術評論社から出ていたマック情報誌。なんかか妙なテイストがあった。技術評論社というのは、名前からしてカタいイメージがあるが、『AVクリップ』とか『東京オタッキースポット』とかときどきヘンな本を出す。