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対談企画『GON!』比嘉健二VS『危ない1号』吉永嘉明「卑屈でも鬼畜でも飯は食っていける!! 」

卑屈でも鬼畜でも飯は食っていける!! ザ・対談!!GON!』比嘉健二VS『危ない1号』吉永嘉明

(比嘉健二)

吉永嘉明

今、巷で話題の雑誌を仕掛けた張本人が、飲み屋で語った危ない編集裏話。あらゆる雑誌のスキ間を狙って活字世界に揺さぶりをかけるそのワケは…!!

初出:青林堂『月刊漫画ガロ』1995年12月号

☆遊び心を活かす面白さ。

吉永:比嘉さんが暴走族雑誌について受けたインタビューは、ずいぶん読んだ覚えがありますよ。結構でてましたよね。

 

比嘉:そうですねえ。『ティーンズロード』を編集してたときですけれど、『ユリイカ』とかに。そういうイメージのほうが強いんですよ、僕の場合は(笑)。でも『危ない1号』とうちの『GON!』とは読者が一部だぶってますよね。

 

吉永:アンケート葉書では、ほとんどの人が読んでる雑誌に『GON!』と『クイック・ジャパン』をあげてますよ。ほかに似ている雑誌が思い付かないみたいですね。

 

比嘉:うちのは『クイック・ジャパン』とは違うと思うけどなぁ(笑)。

 

〇『GON!』は創刊当時から話題になっていましたが、かなり暖めていた企画だったんですか?

 

比嘉:以前やってた『ティーンズロード』が成功したので、それはもう若い人たちにまかせて、また新しいことやろうと思いまして。それで何をしようか、と思ったんですが、もともと東スポが好きだったもんで、東スポを雑誌にしたいなぁってずっと思ってたんですね。そんな時にアメリカのタブロイド誌で『ウィークリーワールドニュース』を銀座のイエナで手に入れまして。東スポの一面に載っているような、生まれた子供が三百キロだった、とか、ETとクリントンが握手してる写真とか、うさんくさい記事を載せてることで有名なんですけれど、でも買っても英語が全然わからなくて(笑)。でも何かニオイたつものがあったんですね。表紙にドラキュラの骸骨の写真があって、それが発見されたという記事が一面にあるんです(笑)。あと、犯罪やフリークスものがてんこ盛りになっていて。

それでその雑誌を訳してもらったら、訳した人が「これは非常にレベルが高い」って言うんですよ。そんなレベルの高いものをそのままやるっていうのはできないけれど、マネなら何とか出来るんじゃないかと考えたんです。うさんくさい記事をメインに持ってきて、あとはいろいろな要素をいれていけば、日本のタブロイド誌に出来るんじゃないかな、と思って(笑)。

 

吉永:でも、よく創刊できましたね(笑)。

 

比嘉:普通そういうものが営業会議では通りにくいでしょ。でもたまたま「これは面白い」といってくれたやつがいまして。「売れないかもしれないけれど、こういう本の営業をしてみたい」って。でも自分としてはせっかく前の雑誌が当たって会社に貢献できたのに、これで失敗したらどうしようって、結構不安だったんですよ。誰も売れないと思ってた(笑)。でもラッキーなことにコンビニエンスでの展開ができまして、最初から十万部でスタートしたんです。

 

吉永:えーっ、十万まいたの。すごいなあ。メジャー誌より部数が多い(笑)。

 

比嘉:実売は全然ダメなんですけどね(笑)

 

吉水:でもさっき言ってました『ウィークリーワールドニューズ』って、確かに面白いですよね。だいたいメインの記事がウソなの。ウソなんだけれど面白いんですよ(笑)。それでサブの記事が事実なんだけれど、ちょっとヘンなやつばっかりなんですよね。だから僕はそういう小さいネタのほうが好きでした。小さいネタのほうが結構ジャーナリスティックなんですよ。

 

比嘉:それで、もう少しよく調べたら、あのタブロイド誌は、ワシントンポストやニューヨークポストなんかにいた連中が作ったらしいんですよね。もともと頭のいいやつが落ちてきて作ったやつだから、もう勝てない(笑)。

 

吉永:すでに基礎があったわけですね。

 

比嘉:だからアメリカはすごいなって思いましたよ。

 

吉永:遊び心をうまく活かせるというか、基礎がある人のお遊びですよね。

 

比嘉:それって余裕がないと出来ないですよ。余裕がないとマジで怒る人がいますから。

 

吉永:『GON!』でもそういう投書は多いんですか?

 

比嘉:多いですね(笑)。ちゃんとしたクレームはもちろん受けますけれど。でもそうでないものもありますよ。例えば“尾崎豊は生きていた”というネタをやった時なんか、テレビのワイドショーが信じてきましたよ(笑)。

 

吉永:マジで信じたんですか?

 

比嘉:そう、マジで(大爆笑)。

 

吉永:バカじゃないの(笑)。なんか楽しんで読む、っていうことが出来ないんですね。

 

比嘉:“スケボーおじさん”のネタをやったときもやっぱりテレビ局がきましてね。「どこにいるんですか」っていうから「砧公園にいるから捜してみて下さい」って(笑)。でも最近はウソだってわかったみたいで、全然こなくなりましたけど。でもそういうことで思ったのは、活字の恐さですよね。雑誌に載ってしまうと意外と信じてしまうというか。

 

吉永:ボードに手書きでかいてあっても信じないのに、活字になるとすぐに信じてしまうんですよね。でもそれちょっと知力がなさすぎますよ(笑)。

 

比嘉:ちゃんと取材した記事もいっぱいあるんで、そういう記事でくればこっちもちゃんと答えるんですけど、でも来るのはきわどいものばかりで(笑)。

 

吉永:うちなんて来たら困るなぁ。「あの強姦魔の人をインタビューさせてください」っていわれてもねえ(笑)。

 

〇吉永さんは、最初に手掛けた雑誌は『EXCENTRIQUE』でしたが、旅行雑誌というふれこみであったにもかかわらず、すでにあの雑誌に『危ない1号』の要素は入っていましたよね。

 

吉永:そうですね。あの雑誌は4人でやってたんですが、結局1年くらいで廃刊になってしまって、その後事務所を借りてくれるという条件でちょっと教育関係の情報誌をやって。でもそっちも危うくなってきたんで、宝島社に売り込みに行ったんです。「別冊宝島で『EXCENTRIQUE』をつくりたいんですけれど」って。そうしたら話をきいてくれまして「じゃ、特集部分だけを抜き出したものを別冊宝島でやりましょう」ってなって、それで作ったのが『別冊宝島EXタイ読本』だったんですけれど。

 

〇あれはタイの本当に知りたいところが書かれてあって、面白かったですね。

 

吉永:あれも、その後に出した『別冊宝島EX 裏ハワイ読本』も結構売れたんですよ(笑)。でもそうこうしてるうちに事務所がなくなってみんなバラバラになってしまったんですね。でもやっぱり仕事はグロスで受けたほうが好きなことができますから、それでまた集まって、まずクライアント探しでしたね。それでデータハウスさんと出会って、そこの社長さんが理解のある方で、『危ない1号』の企画が通ったんです。現在は3人ですけれど“東京公司”が一番力を入れているのが『危ない1号』なんですよ。でもこの本は取材をしてから出すまでに1年かかりました(笑)。実質ふたりでつくってますしね。もうひとりはプロレスの本なんかを作ってますから。

 

〇でも、売れましたよねえ。

 

吉永:売れたというか、僕の感覚では初刷部数が多かったんで、まずそれが不安でしたね。地方からガンガン返本がくるんじゃないかって(笑)。返本が多かったらもう2号はつくれないなって怖かったんですけれど。だって初刷2万って、相当ブランドイメージがついてないと絶対につらいと思うんですよ。ホントに心配だったんですが、でも今は5刷で4万かな。で、もうすぐまた再版がかかるんです。だから年内には5万くらいかなぁ。

 

比嘉:すごいねっ、5万!

 

吉永:でも、5万いったらこれ以上売れないように、読者の皆さんが買いたくなくなるようなテーマを入れなきゃいけないと思って。これが10万いってしまったら、もう好きには作れないでしょ。多分抗議の山だと思うんですよ。だからこれくらいで押えておきたい(笑)。

 

比嘉:ゆくゆくは月刊にするんですか?

 

吉永:いやそれは絶対に無理ですね。今の状態では人を雇えないし、また人を管理する能力もないし(笑)。来春あたりから隔月でいこうかな、と思ってるんですけれど。だから春からはちょっと人が欲しい。でもお金がないからボランティアでも募集しようと思って(笑)。『GON!』は何人で作ってるんですか?

 

比嘉:うちは今4人ですね。最近2人いれましたから。

 

吉永:えっ、少ないですね。あの細かい誌面を毎月4人でやってるんですか?

 

比嘉:そう、だからいつ倒れてもおかしくないですよね(笑)。でもうちは『危ない1号』さんみたいに単行本として耐えられるような内容じゃないから。ドラッグやったって上っ面で。だから数は出てるけれど、中身が全然ないの(笑)。

 

吉永:いや、でも『GON!』はストリート感覚の強い雑誌ですよ。

 

☆下世話なものは規制があったほうがいい

〇『GON!』は地方での反響はどうですか。

 

比嘉:わりといいんですよ。特に南のほうが。葉書や電話も多いですね。

 

吉永:でも、地方の読者は特に大事にしたほうがいいですよね。情報に飢えてますから、かえって敏感に反応してくれますよね。1号のアンケート葉書でも、次が買えるか心配です、っていう人もかなり多かったですから。

 

比嘉:あっ、同じですね(笑)。そういう不安は強いみたいですね。『ティーンズロード』なんかは読者が暴走族だから、東京よりも地方の方が売れていて、書店に置かれてる場所がすごく優遇されてましたよ、ジャンプの隣りに並んでたりしてね(笑)。

 

吉永:いい話ですねぇ(笑)。地方にはそこの文化っていうのがありますよね。『カミオン』っていうトラック雑誌なんかも結構いいところに置かれてますよね。根強い人気というか。でも『GON!』みたいな雑誌を作ってくれる人って少ないでしょ。出版社って東京に集中してるでしょ。それでインテリなんかが多くて、そういう人は地方のカルチャーというか、高校を卒業してすぐに工員になるような人達の気持ちが全然わからないんですよね。だからそういう人達に何かメッセージが伝わってくるような雑誌っていうのが実は少ないんですよ。だから『GON!』みたいな雑誌が増えていけば、活字文化は広まっていくと思いますよ。

 

〇面白ければどんなに活字が小さくても隅から隅まで読みますから。

 

比嘉:でもそれは多分うちの場合は記事が短いからだと思いますよ(笑)。週刊誌なんかで特集記事とかあっても長いと結局読まないんですよね。作ってる自分がそうんなんだから、読者ってそんなに長い文章を読むのかなって(笑)。だから自分が読者だったらこれくらいの本かなと。自分のレベルにあわせてるんですよ、実は(笑)。

 

吉永:でもそれはちゃんと読める雑誌を作ってるっていうことですよ。多分ね、『文藝春秋』とか『世界』とか買っても、あまり読んでないと思いますよ。一冊まるごと読む人ってあまりいないんじゃないか、って思います。入院してたり東京拘置所に入ってたりする人なんかは読むでしょうけれど(笑)。

 

比嘉:もともと日刊ゲンダイとかああいう新聞のほうが好きだったから、こういう雑誌にしたんだろうな。あまり長い文章だと自分でも理解できなくなっちゃうから(笑)。

 

〇そうすると、ものすごい量のネタが必要になってくると思うんですが、情報はどこからひろってくるんですか?

 

比嘉:創刊号を出してから、読者の反応がかえってくるんですよ。例えば「口裂け女を見つけたから取材にきてくれ』とか。そうするとすぐに電話して取材にいって、そうやってどんどん拡がってくるんです。今はファックスもかなり普及されてますから、地方の読者なんかはファックスで送ってきますね。

 

吉永:なんか『噂の真相』みたいになってますね。すばらしいことじゃないですか(笑)。

 

比嘉:でも8割がガセだけれどね。でも逆につい信じちゃって、なんだかバカみたいですよ(笑)。

 

吉永:でも『GON!』は読者とかなり一体感があるんじゃないですか?

 

比嘉:そうでしょうね。だから喜んでくれるんだと思うけれど。

 

吉永:うちの場合はわかってくれていない読者も多いんですよ。でもそれも嬉しいんですね。「じゃ、少しづつ鍛えていくか」っていう気持ちになれるじゃないですか。少し誤解しているんだけれど、正確に読みとってはいないんだけれど、でも何か感じとってくれてるんですね。そういうのはすごく嬉しいですね。逆に裏の裏まで読みとってしまうようなインテリの人から葉書もらっても嬉しくないですから。シニカルに分析されると、イヤ~な気持ちになりますよ(笑)。

 

比嘉:読者に女の子って多くないですか?

 

吉永:あっ、実はうち半分が女性です。

 

比嘉:うちもそうなんですよ。でも最近アナーキーさがなくなってきたんで、これはちょっとイカンなって思ってるんです。「親と一緒に読んでます」なんて葉書もくるし。でも違うんだよね。親には「こんな本は読んじゃいけません」って言って欲しい(笑)。

 

吉永:でもアンケートの半分が女の人だっていうのは、勇気づけられますよね。事務所にも電話はよくかかってきますよ。でもちょっと困るのは「あのぉ、シャブってどこで買えるんですか、こっそり教えて下さい」なんていう電話ですね(笑)。そういう時は「一応ここは普通の編集室なんでそういう質問にはお答えし兼ねるんですけれど。一応覚醒剤はイリーガルになっておりますので」ってちゃんと応対してますよ(笑)。

 

〇どちらも店頭に並ぶ本なので、読者が考えているよりもタブーには敏感なところがあるんじゃないかと思うんですが?

 

比嘉:うちはもうコンビニエンスにきられたらおしまいですからね。だからそういう意味では読者も誤解してるところはありますよね。「タブーに挑戦してくれるところが好き」とか「SPA!でもできない過激なことをやる」とかいわれるんだけれど、そんな大層なもんじゃないんだよね。姑息に売れてほしいってだけだから(笑)

 

吉永:うちもタブーだらけ、もう自主規制の嵐ですよ

 

比嘉:やっぱりそうですよね。

 

吉永:本屋で売る本は、顔も知らない人に買ってもらうわけだから規制だらけですよ。というか自分で規制してしまいますね。まったく規制のないドロドロしたエグイ本はそういう人達に見せちゃいけないですよね。でも見たい人もいるだろうから、そのうち通信販売の本を出そうかと思ってます(笑)。

 

〇規制のない本っていざつくるとなると結構難しいですよね。逆に書きっぱなしになってしまう危険があるから。

 

吉永:要するにオナニーみたいなもんでしょ。みうら(じゅん)さんみたいに人にみせるオナニーができる人はいいですよ。でもたいがいの人はそういうオナニーってできないんですよ。サービス精神がないから。

 

比嘉:やっぱりある程度規制があったほうが、逆に面白いですね。もともとエロ本作ってましたから(笑)。『写真時代』とかも規制の中でいろいろ面白いことやってましたよね。荒木(経惟)さんなんか、ちょとミを出したりして、それで怒られると「ごめんなさい」して、今度はスケパンはかしてとかってあの手この手で考える、そういう悪さをしてるのが楽しいんだから(笑)。だから全部いいですよ、なんて言われちゃったら何かつまらないでしょ。だから僕は規制があったほうが、こういう下世話なものはいいと思うんですよ。

 

吉永:そうなんですよね。規制があると、ない頭を絞ろうとするでしょ。それは予算の規制ってことでも同じことが言えますよね。『危ない1号』も制作費があまりなかったから、表紙のモデルも渋谷のセンター街で調達に行ったりして(笑)。

多分お金のあるところの編集者っていうのは、デザインはどこにたのむ、写真は誰にって分業するでしょ。それはもちろんいいことなんだけれど、あまり恵まれていると、自分で細かいところまで工夫しようっていう気にはならないですよ。だからうちは同人誌とメジャー誌の中間のスタンスですね。でも次号の表紙はエロ本にモデルを配給している事務所から探しました。写したのは顔だけですけれど(笑)。

 

比嘉:でもこの1号の表紙はスタジオ撮りでしよ。

 

吉永:いや、倉庫の中で撮りました(笑)。

 

比嘉:でもオシャレにみえますね。

 

吉永:それは今回の反省点です。この表紙、ちょっとスカしてるじゃないですか。こんなにスカしちゃったら、地方の工員の方々は手にとってくれないですよね。「あっ、俺には関係ないな」って瞬間的にね。そういう人達ってスカしに敏感ですから。きっと『スタジオボイス』なんか雑誌だと思ってないでしょ

 

比嘉:いやそれよりも知らないかもしれないですよ。『ティーンズロード』やってたときにね、読者の暴走族が面白いこと言ったんですね。暴走族雑誌の表紙っていうのは、たいがいネームがごちゃごちゃしてて、それでバイク写真の切抜きがあったりして、という感じでね。で、一時期うちが表紙をモノトーンにして気取ったときがあったんですね。そうしたら反応がすごく悪くて「こんなの全然よくない」っていうんですよ。「なんで、カッコいいじゃない」って言っても全然受け付けないんですね。感覚が違うというか、表紙は電車の中刷広告と同じで、それを見て買うか買わないか決めるんです。シビアといえばシビアですよね。だから『スタジオボイス』みたいにスコンってやっちゃうと、何だかわからねえや、って。

 

吉永:ホントにそういうところは敏感ですね。だから僕も日々闘いですよ。自分のスカしをどう押えるかって。やっぱりどこかスカしたところありますからね(笑)。それをどう押えてあけすけにしていくかってデザインなんかもカッコいいんだけれども読みやすく、っていうのを一応基本にしてるんですよ。

 

比嘉:恥ずかしいでしょ、うちの表紙、すごく恥ずかしい(笑)。自分じゃ買わないよ

 

吉永:低俗なネタと高尚なネタがあって、普通はどっちも好きなんだけれど、でもそれが両立する雑誌ってなかなかないんですよね。そういう雑誌を作りたいんですよ。スカしちゃえば簡単なんですけれど、でもわかりにくいじゃないですか。わかりやすいんだけれど、ちょっと高尚なものも入ってるっていうね。『GON!』なんかはその中間の線でうまくいってるのかも知れませんね。

 

☆“くだらない”部分をこだわる?

〇そのお手本になる、というか好きな雑誌はありますか?

 

比嘉:僕の好きな雑誌はみんな廃刊になっちゃう(笑)。『写真時代』や『Billy』とか、ああいうのが好きでしたよ。あと、みんなあまりしらないんじゃないかと思うんだけれど『タイフーン』っていう雑誌があったんですよ。僕はちょうど『POPEYE』世代で、あれが出たときはすごい衝撃を受けたんですね。でも読んでいるうちに、何かウソくさいなって思ってきて。最初はあこがれてたんだけれど、西海岸ってそんなにいいのかなぁって(笑)。

そうするうちに、ペップ出版からそれとはまったくアンチの、悪ガキ版『POPEYE』みたいな雑誌がでたんです。それが『タイフーン』という雑誌でね。それが結局『ティーンズロード』の原点になってるんだけれどね。そのころは暴走族の全盛期だったから、千葉の九十九里ブラックエンペラーがどうした、とか、総長の話なんかがあったりさ。でもつくりは『POPEYE』なの。レイアウトなんかがそっくりで(笑)。そこにまたボブ・ディランのインタビューが入ったりしてて、もうめちゃくちゃなんですが、それがすごくおかしかった。でも廃刊になってしまって(笑)。

 

吉永:きっと売れなかったんでしょうねぇ(笑)。

 

〇吉永さんは、どんな雑誌を読んでいたんですか?

 

吉永:あまり読んでいないんですけれどね。高校のときに読んでたのは恥ずかしいものばかりで(笑)。『世界』『朝日ジャーナル』『噂の真相』『現代の眼』。ちょっとかわいげがないでしょ(笑)。それで大学に入ると『ユリイカ』や『夜想』なんかを読んでいたんですが、自分で仕事をするようになってからは、逆にそういうものが嫌いになりましたね。単なる一読者のときは、そういう雑誌を読んで背伸びするのが好きだったんだけれど、編集の仕事を始めたら、スカしたものが嫌いになってしまいました(笑)

そもそも僕は『世界』を生協で買ってたんですが、でも一冊読むのに半年かかるんですよ。だから年刊でいいんじゃないかなって(笑)。自分の仕事でそういうものは作っちゃダメだなって思ってね。だから読んでた雑誌で影響されたものはないです。まあ、反面教師ですね。

 

〇やっぱり読者でいたときと実際仕事に携ってからだと、いろんな意味で考え方が違ってきますよね。お二方が作るような雑誌を編集してみたい、と思っている若い人達も多いと思うのですが…。

 

比嘉:どうなんだろうね。やっぱりちゃんとした大学に入ってちゃんとした道があるんだったら、こういう雑誌は作らないほうがいいですよ(笑)。だって最初からスタンスが全然ちがうじゃない。やっぱりミリオンってどうしようもない会社だから。高卒が当たり前っていう世界だからね(笑)。そういうやつらでもここまでやれるっていう話だけであってさ。だからこの雑誌がコンビニエンスで『VIEWS』や『BURT』と一緒に並んでいるのを見るのは快感ですよ。やっぱり卑屈な根性はあるから(笑)。

 

吉永:でも『GON!』がこれだけ売れていると、いい影響ががあるなと思うのは、大学を出て大手の出版社に勤めてカタイ媒体の仕事をして、でもそれがあきらかに肌に合わないなって自覚してる人達もいると思うんですよ。「俺ってちょっとキチガイなんじゃないかな」って不安を持っているんだけれど、反面どうにか世間に妥協を持っている、そういう人達を勇気づけてくれますよね(笑)。世の中にはもっとおかしな人達がいっぱいいて、その程度じゃおかしくないんだ、それを仕事に活かしている人もいるんだってね。うちが鬼畜系路線で言ってるのもそういうことなんですよ。人と違っていてもそれは別におかしいことじゃない。本当は人と違ってなきゃいけないと思うんですよ。モラルとか道徳観っていうのは、限りなく偏差値に近い人のためにあるものだから。だいたい平均の人なんて面白くも何ともないじゃないですか。ちょっと違ってて危なっかしいような人のほうがいいんですよ。それでもちゃんと生きていけるし、飯も食っていけるんだから(笑)

 

比嘉:でも、みんながこんなふうになったらちょっとイヤだよね(笑)。

 

吉永:岩波書店が『GON!』出したらイヤだよね(笑)。信じていたものがガラガラと崩れてしまいますよ(笑)。

 

比嘉:改めて考えてみると、ちゃんとした雑誌って意外とないんですよね。一見ちゃんとしてるように見えるんだけれど、書いてあることといったら「三浦和良がどうしたこうした」でしょ。結局あまり差がないんですよ。まっ、うちはそこにつけこんだワケですけれど(笑)。だからもっと立派な本がどこかから出ればうちはもっと売れるかも(笑)。

 

吉永:要するにリッパな本とね、あっ、いや『GON!』がリッパじゃないって言ってるワケじゃないけど(笑)。

 

比嘉:リッパじゃないですよ(笑)。

 

吉永:さっきも言ったように、高尚な本と庶民的な本ってあるでしょ。それやっぱり両立できるんですよね。どっちも読めるようなものが出てくる、というのが本当だと思うんですよ。どっちもなくてどっちも読めないっていうのが今なんですよ

昔、エロ本が元気だったころは、その中間というようなものがいっぱい出てきたじゃないですか。『写真時代』とかね。でもあくまでも商売が前提ですから、何等かの理由でうまくいかなくなると、どんどん追いやられていって、情報化を辿るでしょ。情報は情報で役に立つんですけどね。でも『GON!』を定着させたら、比嘉さんは『GON!』と『文藝春秋』みたいなものを両方つくればいいんじゃないですか。カッコいいですよ。あの人は何でもできるんだって尊敬されますよ(笑)。

 

比嘉:でもうちの雑誌はきっとマネするところが出てくるところ(引用者注:コアマガジン時代の『BUBKA』は『GON!』の完全な亜流誌だった)が出てくるでしょうね。だけど一言いいたいのは『ティーンズロード』があれだけ売れたのに、マネしないところはズルイですよね(笑)。

そこに編集者のヒキがありますよね。だってやりたくないよ、暴走族相手にしてさ。取材しながら一緒に走るのイヤじゃない(笑)。でもそれはカルチャーっぽいっていえばカルチャーっぽいでしょ。だからなんでまず『ティーンズロード』をマネしなかったんだって(笑)。

 

吉永:でも、言わせてもらえば『ティーンズロード』こそカルチャーでしょ。ドップリとその世界に浸ってますから。あの雑誌は自分も時々読んでたんですが、要するに自分の知らないカルチャーなんですよね。だから違う世界を見るようで楽しかったですよ。知らない世界って興味がわきますから。

 

〇これから先、どのようなスタンスを保って行こうと思ってますか?

 

比嘉:とにかく、くだらない、というところを、すごく拘って守っていきたいですね(笑)。

 

吉永:うちもいろいろと出版計画はあるんですけれど、今のところできないんですよ、人がたりなくて。比嘉さんのところはライターは足りてます?

 

比嘉:いや、全然足りないですね(笑)。

 

吉永:でも月刊でこれだけ出てるんだから凄いですよ。月刊誌なんて今売れてないじゃないですか。大手の月刊誌って売れてないですよね。だから『文藝春秋』『噂の真相』に次ぐ売上を誇るのは『GON!』かもしれないですよね。総合誌としては(笑)。

 

比嘉:だからうちのライバル誌は『SPA!』なんですけどね(笑)。

 

吉永:じゃ、うちのライバルは『文藝春秋』かな(笑)。裏文春と呼ばれたい、な~んちゃって(笑)。

 

1995年10月9日 文責:編集部

 

 

GON!』1995年12月号

11月17日発売!

(発行:ミリオン出版編集長:比嘉健二)〈企画予定〉

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『危ない2号』1995年11月27日頃発売予定!

(発行:データハウス/編集:東京公司

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