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悪趣味ブームを作り上げた鬼畜系ライター「村崎百郎」

生まれつき神や悪魔の声が頭の中に聞こえてくるという「電波系」。「すかしきった日本の文化を下品のどん底に叩き堕とす」ため「鬼畜系」を名乗り、この世の腐敗に加速をかけようと「卑怯&卑劣」をモットーに日本一ゲスで下品なライター活動を始める。人の歴史が続く限りこの意識、村崎百郎は終わらない。


鬼畜系・電波系ライター「村崎百郎



村崎百郎とはシベリア生まれの中卒工員を自称する正体不明の鬼畜系ライターである。

生まれつき「電波」を受信する特異体質であると自称し、狂気に満ちた特異なキャラクターと豊富な知識で書かれる秀逸かつ猟奇的な文章で「鬼畜系」の地位を築き「電波系」という言葉を定着させた。


1990年代のいわゆる悪趣味ブーム・鬼畜ブームにおいて「すかしきった日本の文化を下品のどん底に叩き堕とす」ことを目的に「鬼畜系」を名乗り、この世の腐敗に加速をかけるべく「卑怯&卑劣」をモットーに日本一ゲスで下品なライター活動を始める。
出典 村崎百郎 - Wikipedia


デビュー以来一貫して「自分は狂人だ」と宣言し続けていた村崎氏だったが、その文章は一見暴力的でありながら、実はすべての人間が胸に秘めている闇を抉り出していて痛快だった。
出典 凶刃に倒れし鬼畜を乗せた『村崎百郎の本』という棺 - エキレビ!


まともな人は誰一人として知らないけれど、
まともじゃない人は誰もが知ってる人。
出典 鬼畜ライターに合掌: 呼び鳴きな毎日




メディアデビュー


『月刊漫画ガロ』
1964年から2002年頃まで
青林堂が刊行していた漫画雑誌。

漫画界の極北に位置する伝説的な漫画雑誌であり「サブカルチャーの総本山」として漫画界の異才・鬼才をあまた輩出した。

1998年からは青林堂の系譜を引き継いだ青林工藝舎が事実上の後継誌『アックス』を隔月で刊行している。


『月刊漫画ガロ』1993年10月号の特集「夜、因果者の夜」で特殊漫画家の根本敬によるゴミ漁りのインタビューでメディアに初登場。
出典 村崎百郎 - Wikipedia


自らを「鬼畜系」「電波系」と称し日本一ゲスで下品なライターとして、ゴミを漁って他人のプライバシーを暴くダスト・ハンティングをはじめ様々な鬼畜活動を繰り広げた。
出典 衝撃の死から半年 稀代のトリックスター・村崎百郎とはなんだったのか  - ライブドアニュース


一つ目の三角頭巾で素顔を隠し、「俺は、気狂いだ!!」と狂気を丸出しにし、豊富な知識に裏打ちされた秀逸な文章で独特の地位を築きあげ、今も使われている「電波系」という言葉を定着させた、90年代サブカルシーンの立役者。
出典 村崎百郎と全日本鬼畜Night 電波系! | フェティッシュダディーのゴス日記


ユリイカ』1995年4月臨時増刊号〈総特集・悪趣味大全〉
悪趣味ブームの到来を宣言した『ユリイカ/悪趣味大全』に村崎百郎は「ゲスメディアとゲス人間」と題したデビュー原稿を寄稿、これ以降「鬼畜ライター」として活動を本格化させる。

鬼畜系ムックの金字塔『危ない1号』『危ない28号』にも毎号登場し、コンビニ雑誌『GON!』から精神病理雑誌『imago』まで鬼畜思想を広く拡散、村崎は悪趣味ブームの中心的存在になっていく。


次々と鬼畜本を出版


『電波系』
異界からの電波を受信してしまう人々や妄想的な怪文書の類をまとめて体系的に扱った一冊。思い込みと妄想による確信だけを根拠に活動する電波な人々の生態に目を背けたい人には全く必要のない本。

以下《帯紹介文》より

「聖なる啓示から陰謀告発まで…異界からのメッセージを脳で受信する特別な人々『電波系』。1000の電波を受信するモノホンの電波系鬼畜ライター村崎百郎と、因果者/電波人間探訪の権威にして特殊漫画大統領こと根本敬の悪夢の共宴による妄想幻魔大戦。オール・ザッツ・電波系」


鬼畜電波ライターの村崎百郎
特殊漫画家の根本敬との共著です。

はっきり言って、イかれてます。
完全にあっち側の人の告白本です。

この本を手に取るような方は社会常識的に余りまともな感性の人種ではないと思いますが、そういう日陰の、人生がマイナーそのものみたいな人々には本書はある種の癒しをもたらすでしょう。
出典 Amazon.co.jp: 電波系のタクラマカン砂漠さんのレビュー


第二次世界大戦ユダヤ人六〇〇万人を虐殺したヒトラーは何を隠そうこの俺である。罪もない民衆を虐殺して苦しめたローマの暴君ネロは何を隠そうこの俺である。

焚書坑儒をした秦の始皇帝は何を隠そうこの俺である。銀貨三十枚でキリストを売ったユダは何を隠そうこの俺である。時空を超えたあらゆる陰謀の中で、さらに最悪の情況を導いたのは全て、何を隠そうこの俺である。

悪意の介在する全ての時空間には俺の妄想神経が届いてる。この悪意は決して終滅することがない。鬼畜行為の裏にはいつも俺がいる。

村崎百郎は時空を超えて存在する悪意の総体である。人の歴史が続く限りこの意識、村崎百郎は終わらない。
出典 太田出版『電波系』(根本敬+村崎百郎)「鬼畜ネットワーク」より


『鬼畜のススメ』
村崎百郎の処女単行本にして唯一の単著。
鬼畜的生き方の入門書として、ゴミ漁りのノウハウを詳細に解説しており、ゴミを通じて市井の人々の生活を覗き見る様子が事細かに綴られている。

行間からは人間の深淵や哲学が見え隠れし、鬼畜な文体ながら汚穢の底から生を実感する村崎流の人間賛歌が伝わってくる。

またゴミを漁って会った事もない人間の私生活を独特な文体で浮き彫りにしていく過程が、当時から社会問題になっていたストーカーやプライバシー暴きの「被害者ではない側」の姿を克明に描き出し、逆説的に現代社会における自衛の必要性を説く世紀末のサバイバル書という見方にも繋がっている。


夢の島」とはよく言ったものだ。
まさに文字通り、多くの人間の破れた夢や、捨てた夢が流れ着く場所なんだから笑っちゃうよ。

汚穢にまみれてゴミ回収車に放り込まれ、夢の島へ運ばれて行くのが鬼畜にはお似合いの最期だな。俺は夢の島に捨てられてゴミと一緒に静かに腐るよ。
出典 村崎百郎(@Hyakurou_bot)さん | Twitter


ゴミは捨てた人間の過去の清算という感じで、拾っているとひとりの人間の辿ってきた過去が読み取れてとても興味深い。

たとえば見知らぬ他人をひとり特定して、そいつの出すゴミを漁り続けたとしよう。3ヵ月もあればその人物の生活や人生のおおかたがゴミを通して明らかになるだろう。

これだけは保障しよう。
想像力や妄想力を働かせながら、漁ったゴミと対話を続ければ、あんたらは必ず深い「他者理解」や「人間理解」を得られるだろう。
出典 「鬼畜のススメ 世の中を下品のどん底に叩き堕とせ!! みんなで楽しいゴミ漁り」 村崎百郎データハウス




悪趣味ブームの他のライターは記事は鬼畜だがライター本人はまともというスタンスであったが、村崎は自身も異常であるというキャラクターに則りつつ執筆活動を行っていた。

妻の森園みるくとは共作で漫画執筆も行っていた。森園とは同棲しており内縁の妻だとしていたが「村崎百郎」のパブリックイメージに反するとして結婚している事は認めていなかった。
2人が結婚したとする記事には抗議して、セックスだけの関係と訂正するように要求していた。

自称していたプロフィールについて、真偽のほどや詳細は不詳となっていたが、2001年に出版されたペヨトル工房回顧録にて同社の社員になっていたことを自ら明かしていた。
出典 村崎百郎 - Wikipedia


村崎百郎は自身の中にある狂気や、彼が言う所の「電波」という押さえることが出来ない衝動と正面から向かい合い、それを覆い隠すこと無く社会そのものと対峙した稀有な人間であり表現者であった。
出典 村崎百郎館記念祭|マンタムのブログ


凶行




2010年7月23日、読者を名乗る32歳の男性に東京都練馬区羽沢の自宅で48ヶ所を滅多刺しにされ殺害された。

逮捕された容疑者は精神鑑定の結果、統合失調症と診断され不起訴となった。事件報道で、本名が「黒田一郎」であることや、実際は北海道出身で、最終学歴は明治大学文学部卒業であり、ペヨトル工房に勤務していたことが公になった。
出典 村崎百郎 - Wikipedia


作家村崎百郎さん刺され死亡=男逮捕、「実践本にだまされた」—警視庁(時事通信)
23日午後5時50分ごろ、東京都練馬区羽沢の作家黒田一郎さん(48)=筆名・村崎百郎=方で、男から「人を刺した。捕まえてください」と110番があった。警視庁練馬署によると、黒田さんが室内で血を流して倒れており、ほぼ即死。同署は殺人容疑で、室内にいた横浜市に住む無職・吉本敏洋(32)を現行犯逮捕した


危険潜むネット 村崎百郎さん殺害、50カ所刺される 一方的恨み、検索し自宅へ(産経新聞)
作家の村崎百郎さん(48)=本名・黒田一郎=が自宅で刺殺された事件で、村崎さんは腹部などを約50カ所刺されていたことが24日、警視庁練馬署への取材で分かった。「著作に不満があった」などと供述し、殺人の現行犯で逮捕された無職の吉本敏洋(32)が一方的に恨みを募らせたと同署はみている。犯行手段にインターネットを利用したり、著作やネット情報が犯行動機となる事件は後を絶たず、捜査当局で警戒を強めている。


根本敬「追悼・同志村崎百郎のあんまりな死は痛いにも程がある。が、とにかく『生きる』しかありません」(2010年7月24日付)
「悪趣味~鬼畜ブーム以降それらが「人」としての前提を外れた「悪い悪趣味」「悪い《鬼畜》」ばかりになり、村崎さんもそこを危惧し俺もそこ危惧してましたから」(根本敬














根本敬談(Eテレ『ニッポン戦後サブカルチャー史』より)




「世の中を下品のどん底に叩き堕とせ」ってさ、
いわゆるバブルの浮かれていた時代の日本に対して、あるいはそれ以降も浮かれ続けてるよね。

とにかくスカしてカッコばっかりつけて結局は自分のことしか考えなくて金に汚い奴とかさ、そういう人が大嫌いなもの凄い正義派だったわけよ。

そういう人間に対する攻撃は本当に下品な言葉を駆使して物凄く執拗でしたね。でも逆に世の中を少しでも“まとも”にしようって思ってやってた結構マジメな人なんですよ、実は。
出典 Eテレ(ニッポン戦後サブカルチャー史Ⅲ)に出演された根本敬氏の発言メモ


町山智浩談(根本敬『人生解毒波止場』文庫版解説より)


ゴミといえば、村崎百郎だ。
根本敬さんから「鬼畜のゴミ漁り」として紹介されたのは、前から知り合いだった編集者・黒田一郎さんだった。

「今夜は朝までゴミ・ハントをコーチしますよ」
 深夜の早稲田、僕と根本さんは村崎百郎のガイドで路上のゴミを見て回った。といっても片っ端からゴミ袋を開けるわけじゃない。
出典 根本敬「人生解毒波止場」文庫版解説by町山智浩




「袋を見ただけで、大体中身はわかりますよ」
村崎百郎の言葉は本当だった。
彼が「これだ」と言う袋にはお宝、つまり日記やノートや写真が入っていた。明け方のファミレスでその戦果を確認しながら、村崎百郎の鬼畜哲学をうかがった。

「僕は根本さんと一緒に、この日本を下品のどん底に突き落としてやりたいんですよ!」
その後、村崎百郎は「鬼畜系作家」として活躍することになる。
出典 根本敬「人生解毒波止場」文庫版解説by町山智浩 - 映画評論家町山智浩アメリカ日記




そして2010年7月23日、黒田一郎さんが自宅を訪ねて来た32歳の男に刺殺された。犯人は統合失調症と判断され不起訴、精神病院に措置入院となった。

「あの後、練馬警察署から電話があったんだよ」根本さんは言う。
「犯人は最初、俺んちに来たんだって」

警察によると、犯人は根本さんの自宅の近くのとあるアパートを根本さんの仕事場だと決めつけて訪れた。
だが、それは間違いで、根本さんはそのアパートを借りていなかった。そこで犯人は黒田さんの自宅に向かったのだというのだ。

「本当は俺がやられるはずだったんだ」
根本さんは決めた。
そのアパートを借りることを。
「これは説明のしようのない衝動なんだ」
出典 根本敬「人生解毒波止場」文庫版解説by町山智浩




それにしても、いつまた退院してくるかもしれない犯人が知っている場所に自分から飛び込むなんて。

「うん。でも、この気持ちには一切曇りが無い。それにこれは村崎さんへの自分にできるいちばんの供養だと思うんだ」

「でも、やるんだよ」と自ら因果鉄道のレールに横たわる人をいくら「無茶ですよ」と説得しても、天から「お前は黙ってろ!」と怒鳴られるだけだ。

彼の決意を聞いて、根本さんが「勝新原理主義」なら僕は「根本根本(こんぽん)主義」であり続けよう、そう思った。
出典 根本敬「人生解毒波止場」文庫版解説by町山智浩


追悼本


村崎百郎の本』
村崎の死後、根本敬京極夏彦など関係者の証言や
本人が遺した文章などから綴った書。

謎が多く実体が掴みにくかった村崎百郎
多面的に語られてる貴重な一冊。

村崎百郎がこの世に残してきた足跡は、
この360頁の中に詰め込まれている。


村崎百郎は90年代に「鬼畜系」を牽引した、
いや、鬼畜系と呼べる唯一の人物でした。
この人がいたことで動いたもの、
作られたものが、世の中にはありました。
原動力だった人です。
出典 『村崎百郎の本』(アスペクト)


よくいわれている「ポーズで鬼畜をやっていた」「本当はただのいい人だった」とか…。そういった誤解は多いんですけど、それは大きな間違いで本当に彼は「鬼畜」でした。そして同時に「いい人」でもあったんです。

決して「鬼畜」を演じていたわけではなく自分の中にある「鬼畜」の部分と向き合い、自己正当化して正常を装うことを良しとしなかった人だと。
出典 伝説の鬼畜ライター「村崎百郎」の記念館が完成! 妻・森園みるくが語る“鬼畜”の素顔


自分で鬼畜を名乗ることで、村崎さんにとっても世の中を生きやすくし、そういうことで悩んでいる人に対してもメッセージを送れると考えていた部分もあると思いますね。

ちゃんと村崎さんの文章からメッセージを受け取ってくれる読者もいるし、そういう意図が上手く伝わらない人もいた。むしろ、村崎さんの文章を「下品」「露悪的」って毛嫌いしちゃう人の方が多かったのかもしれません。
出典 伝説の鬼畜ライター「村崎百郎」の記念館が完成! 妻・森園みるくが語る“鬼畜”の素顔


事件が報道された直後、「鬼畜のような言動を売りにしてきたのだから、己のキャラに見合った最期だ」と、したり顔で言う者もいたようだが、生前の活動がどのようなものであれ、他人から命を奪われなければならない道理はない。

本書に書き連ねられた友人たちの言葉を読んでいると、いまさらながら深い悲しみを感じ、とてつもない喪失感が押し寄せてくる。まったく惜しいキチガイを亡くしたものだ。
出典 凶刃に倒れし鬼畜を乗せた『村崎百郎の本』という棺 - エキレビ!


村崎百郎」とは何だったのか?



村崎百郎が生前自称していた
プロフィールは以下の通りである。

1961年シベリア生まれ。
最終学歴は中卒。
自称「工員」の鬼畜ライター。
近所のゴミ漁りが趣味。

他人の妄想を「電波」として受信できる特異体質。
目標は「すかしきった日本の文化を下品のどん底に叩き堕とす」こと。


「村崎百郞は、おそらくは日本で最高峰の根性の腐り切って悪意に満ちた腹黒い醜悪な最凶最低の汚穢主義者のゲス人間だ」

……高らかに宣言しながら1995年『ユリイカ』に登場したデビュー原稿。以降、紫頭巾の巨漢が弾丸の如く放つ数々のゲス文章には困惑と賞讚相半ばする反応が湧き起った。

盟友・青山正明と究極の悪趣味ムック『危ない1号』シリーズ創刊に参加、精神病理専門誌『imago』にも執筆。高尚な思想誌からゲスの極みまで、さらに本格的に文筆活動の場を広げていく。
出典 アスペクト編『村崎百郎の本』多田遠志+尾崎未央「村崎百郎クロニクル」



悪趣味ブームもいよいよ爛熟、
全国のコンビニまで波及した。

B級ニュース雑誌『GON!』1995年10月号より村崎は「汚物童子」なる冠を戴き初登場。コンビニ雑誌の読者にも村崎流の鬼畜思想を垂れ流し始めた。

隣人OL「ユキコ」へのゴミストーキング、妄想恋愛。ユキコの引っ越しで”失恋”した後も、女性編集者と互いのゴミを漁り合い誌上報告合戦…とワケのわからぬ展開になった。

紫頭巾姿でカラーページに登場したこともあり、『GON!』で村崎を知った者も多いだろう。


村崎百郎というあまりにも異様かつ独特なトリックスターが90年代に突如禍々しく屹立した時、カルチャーシーンに広がった衝撃をもはや知らない世代もいるだろう。

だが、その存在自体を無視することは、一度でも彼の文章を目にした者ならとても不可能であった。読者の憎悪や軽蔑、それら全てが自らへの賞讚、我こそ鬼畜なりと断言する得体の知れぬ電波系ゴミ漁り。

後になって、覆面の中身が編集者の黒田一郎だったと明らかになっても、青年期を知る証言者が現れても、「彼が何者であったのか」未だはっきりとは掴み切れない。
出典 アスペクト編『村崎百郎の本』多田遠志+尾崎未央「村崎百郎クロニクル」




京極夏彦談(アスペクト編『村崎百郎の本』より)


冷静に自分の異常性を見据えているんですね。
彼はこう言いました。よく覚えてます。

「俺さ、神の声とか聞こえるんだよ。幽霊だってよく見るよ。だけど俺、神も幽霊も、いるなんて思ってないもん。そういうのは俺がキチガイだから見えるだけなんだよね」

「俺、今日ここに来る前、電波に命令されたから、電話機引っこ抜いて壁にぶち当てて壊してきたんだぜ。これって正常だと思う? そんな俺とさ、幽霊が見えるって奴とどこが違う? 俺、違わないと思うんだよね。だから幽霊が見えるとか神の声が聞こえるとか、オカルトぶって偉ぶっている奴らみんな同じキチガイだと思うわけさ」

「俺は自分が正しい人間とは全く思わないし、ハッキリとキチガイだと認識してるわけ。だけど世の中、俺と同じくせに、そうだと思ってない奴多すぎねぇか? だから俺は“俺も鬼畜だけど、お前らも鬼畜だろ?”って言いたいわけだよ。何でみんな鬼畜のくせに自分だけ正しいとか偉いだとか言うんだよ? それって普通の人を騙しているって事だろ? そういうのって俺、許せねえから」
出典 アスペクト編『村崎百郎の本』京極夏彦「あんな理知的で建設的な“クルクルパー”を、僕は他に知りません」


あんな理知的で建設的な“クルクルパー”を僕は他に知らないです。理知的じゃなかったら、自己分析なんてできませんからね。

冷静に自己分析した上で“自分は正常じゃない”と判断した。ということは、理性はあるのに、その理性で判断できない部分というものを抱え込んでいて理性で制御できない以上、“俺は理性的な人間ではない”と判断したわけでしょ。それってすごく真っ当ですよね。

彼の書いている文章って、すごい理性的じゃないですか。あれ、キチガイには書けませんよ。だって、明らかにおかしい人が書いた文章って書いてるうちに論理破綻しますから。

村崎百郎の文章は、どんなにひどいことを書いていても論理的なんです。彼はキチガイの部分を上澄みのほうにグーッと上げて理性の部分で書いていたから「理性が狂気のフィルターを通して出てくる」という状況になっていたんだと思います。
出典 アスペクト編『村崎百郎の本』京極夏彦「あんな理知的で建設的な“クルクルパー”を、僕は他に知りません」


衝撃のコミックエッセイ


『私の夫はある日突然殺された』
私が食事から帰宅すると、
夫が何者かに殺害されていた──。

世紀末に一斉を風靡した“鬼畜ライター”村崎百郎と、漫画家であるその妻・森園みるく

私たちは仲良し夫婦だった、
あの事件が起こるまでは──。

事件後、続々と浮かび上がってくる不思議な出来事。まさか、夫は自分の死を予知していた!?

妻の視点から夫の死を語る、
衝撃のコミックエッセイ!


事件から約7年が経った2017年3月、森園みるくが妻の視点で村崎の死を描いたコミックエッセイ『私の夫はある日突然殺された』が電子書籍サイト「めちゃコミック」で先行配信され、その衝撃的な内容が多方面で話題を呼んでいる。
出典 村崎百郎は自分の死を予言していた! 妻・森園みるくが描く衝撃エッセイ『私の夫はある日突然殺された』メンズサイゾー


作品を描くにあたっては、相当な勇気と決意が必要だったであろう事は想像に難くない。それでもペンを突き動かされた理由の一つには犯人に下された「不起訴」という処分への憤りがあったのだろう。
出典 村崎百郎は自分の死を予言していた! 妻・森園みるくが描く衝撃エッセイ『私の夫はある日突然殺された』メンズサイゾー


検事は最初から「相手は精神病患者だから仕方ないですね」って感じで、完全に犯人の味方でしたよ。犯人として扱うというよりも「可哀想な患者さん」という感じで…。刑事さんの方は「僕だったら死刑にしますよ!」とまで言ってくれましたけど、起訴するかどうかを決めるのは検察ですからね。
出典 村崎百郎は自分の死を予言していた! 妻・森園みるくが描く衝撃エッセイ『私の夫はある日突然殺された』メンズサイゾー


事件の1週間くらい前ですね。漫画では少しボカしてるんですけど、実際に「俺はこの部屋でキ〇ガイに包丁で殺される、ごめん」って断言していました。その時の村崎の表情がまた…もう死人の顔だったんですよ。漫画ではそういう風に描いてないんですけど、顔の半分が歪んでいて、死神に取り憑かれたような表情だったんですよね。
出典 村崎百郎は自分の死を予言していた! 妻・森園みるくが描く衝撃エッセイ『私の夫はある日突然殺された』メンズサイゾー


その言葉は私だけじゃなく、村崎が可愛がっていた親戚の子とか、今回の漫画の担当編集者さんも同時期に聞かされていたんです。そのころの村崎は“電波”が特に酷くなっていて何かに追い詰められているような感じでしたね。今回の作品は複雑な事情があって「事件を基にしたフィクション」となっているんですが、不思議な出来事はすべて本当にあったことです。
出典 村崎百郎は自分の死を予言していた! 妻・森園みるくが描く衝撃エッセイ『私の夫はある日突然殺された』メンズサイゾー




村崎百郎記念館



静岡県伊東市の博物館『怪しい秘密基地 まぼろし博覧会』にて村崎百郎の世界を再現した常設展示『村崎百郎館』が2014年よりオープンした。

この博物館は老舗出版社『データハウス』の鵜野義嗣社長が生みだしたもので、同社が運営する伊東の人気スポット『怪しい少年少女博物館』『伊豆高原ねこの博物館』の姉妹施設でもある。



1番目の部屋では村崎がゴミ漁りで集めた数々の遺品が展示されている。

90年代サブカルチャーのダークサイドを味わうには格好のスポットとなっている。



多重人格的な村崎百郎のイメージから展示は
「ゴミ漁りの村崎百郎」「編集者の黒田一郎」
「魔術に傾倒した修行者としての村崎百郎
といった3つの部屋に分けられている。


村崎が自分の死を予言した時「もし私より先に死ぬなら村崎百郎記念館をつくってあげるよ」って記念館の話をしていたんですよ。

私の方が先に死ぬかもよって言ったら村崎は「そしたら俺が森園みるく記念館をつくる」と言って…。すると事件後「まぼろし博覧会」を運営している出版社の社長さんから「村崎百郎記念館をつくりませんか?」という話が急にきたんです。

しかも、村崎が生前最後に観ようとしていた映画が『まぼろし』(2000年製作/フランス)ってタイトルだったんですよ。それを思い出して映画を調べたら「夫が突然消えて奥さんがおかしくなる」って内容で…(笑)。それも偶然といってしまえばそうかもしれなくて、関連付けて考えるとキリがないんですけどね。
出典 村崎百郎は自分の死を予言していた! 妻・森園みるくが描く衝撃エッセイ『私の夫はある日突然殺された』メンズサイゾー




「人間は燃えるゴミである」と説く村崎百郎は、
一切の良識やモラルを排した「鬼畜」の視点から
同時代の世相について語り続けた著述家である。

2010年の夏、「本を読んで、裏切られた」と語る男に刺殺されるまで「善にも悪にも徹してきれないこと」を本性とする人間への「最低の礼儀」を貫き通した「村崎百郎」こと黒田一郎は「鬼畜」の仮面と「狂人」の皮を自らの生の一部としてひきうけた「人間的な、あまりに人間的な」作家だった。
出典 東京現代美術館「トランスフォメーション」展のアーカイヴ展示より/文・小田マサノリ


鬼畜リンク


村崎百郎ホームページ
1961年シベリア生まれ。鬼畜ライター。<鬼畜系><電波系>という言葉の生みの親。地上最凶の電波系ゴミ漁りの権威。マニフェストは<日本の文化を下品のどん底に叩き堕とす>




鬼畜たちの倫理観──死体写真を楽しみ、ドラッグ、幼児買春を嬉々として語る人たちの欲望の最終ラインとは?
青山正明×村崎百郎
対談「鬼畜カルチャーの仕掛け人が語る欲望の行方」


社会派くんがゆく! - アスペクト
唐沢俊一氏との鬼畜な犯罪批評対談。


追悼・村崎百郎 - Togetterまとめ
逝去の報が流れた瞬間からのTogetterまとめ。


私の夫はある日突然殺された - めちゃコミック
妻の視点から村崎百郎と「事件」の顛末を描いた、衝撃のコミックエッセイ!


村崎百郎本刊行、写真展示、没後リンクまとめ


伝説の鬼畜ライター「村崎百郎」の記念館が完成! 妻・森園みるくが語る“鬼畜”の素顔



村崎百郎は時空を超えて
存在する悪意の総体である。

どの街にも、どの夜にも、どの時間にも、
そして誰の中にも「村崎百郎」は存在する。

村崎百郎」の将来を考えることは
あなたの将来を考えることだ。

人の歴史が続く限りこの意識、
村崎百郎は終わらない。